青山剛昌氏による『名探偵コナン』は、1994年から『週刊少年サンデー』(小学館)で連載が続く人気作品である。その長い物語の中でも、近年とくに大きな存在感を放っているのが「警察学校組」と呼ばれるキャラクターたちだ。
降谷零(安室透)と警察学校時代の同期である彼らは、降谷を除いて全員が殉職している。しかし、死してなお作中の登場人物に大きな影響を与え続けており、物語に欠かせない存在だ。2026年の劇場版『名探偵コナン ハイウェイの堕天使』でもキーパーソンになるとみられ、その人気は衰えを知らない。
今回は、そんな警察学校組のメンバーがたどった運命と、胸を打つエピソードの数々を振り返っていく。
※本記事には作品の内容を含みます
■爆弾処理の最前線で散った萩原研二と松田陣平
警察学校を卒業後、警視庁警備部機動隊の爆発物処理班に所属していた萩原研二と松田陣平は、「揺れる警視庁 1200万人の人質」で描かれた爆弾事件で殉職した。爆弾処理の最前線で命を落とした2人は、同期であると同時に昔なじみの親友同士でもあった。
物語の7年前、萩原と松田は2つの場所に仕掛けられた爆弾をそれぞれ解体する任務にあたっていた。しかし、萩原は解除寸前だった爆弾の爆発に巻き込まれ殉職。親友を殺された松田は犯人への復讐を誓い、紆余曲折の末に刑事部捜査一課強行犯三係へ異動することになる。
そして萩原の死から4年後、同じ犯人による連続爆破事件で松田もまた命を落とす。その死の背景には、犯人の仕掛けた卑劣な罠があった。
松田にとって爆弾の解体自体は簡単なことだったが、その爆弾には爆発の3秒前に、“もう1つの爆弾が仕掛けられた場所”を示す仕掛けが施されていた。つまり、爆弾を解体してしまうと、次の被害を食い止めるための手がかりが失われてしまう状況だった。
松田はこの残酷な選択肢を前にして、自らの命と引き換えに市民を守る道を選んだ。爆発直前、親友に向けて「悪いな萩原… どうやらおまえとの約束は…」と心の中で語りかけるシーンは、多くの読者の胸を打った。
■高木刑事の目の前で事故死した伊達航
警察学校組の中で、皆をまとめる存在だった伊達航。卒業後は刑事部捜査一課強行犯三係に所属し、高木渉の教育係を務めていた。強面だが気さくで面倒見が良く、いかにも「兄貴分」といった印象の好人物だ。
彼の最期は派手な事件ではなく、交通事故によるものだった。高木と徹夜の張り込みを終えた帰り道、路上に落とした手帳を拾おうと屈んだところを、居眠り運転の車にはねられて命を落とした。
彼の死は、犯人との戦闘や誰かをかばった末の殉職といった英雄的なものではない。ただ、ほんの一瞬の不運が命を奪った。そのリアリティこそが伊達の死をよりいっそう重く、やるせないものにしている。
伊達は“班長”と呼ばれ、警察学校組の精神的支柱だった。仲間の変化にいち早く気づき、時には厳しく、時には兄のように背中を押す存在。もし彼が生きていれば現場を知る優秀な刑事として、警察組織の中核を担っていたことは想像に難くない。
だからこそ伊達の死は、読者に「もしも」を考えさせる。仲間思いで将来有望だった彼が、あまりに突然の事故で命を落とした事実は、警察学校組の物語に静かで深い悲しみをもたらしている。


