尾田栄一郎氏による国民的人気漫画『ONE PIECE』。本作を彩る女性キャラクターといえば、麦わらの一味の航海士・ナミや、考古学者のニコ・ロビンが真っ先に思い浮かぶだろう。彼女たちの美しさと強さは、物語を彩る華であることは間違いない。
しかし、長きにわたる壮大な冒険のなかで、読者の目を惹きつけてやまないのは若きヒロインたちだけではない。そこには、激動の時代を生き抜き、酸いも甘いも噛み分けた「マダム」と呼ぶにふさわしい熟練の女性たちが存在するのだ。
今回は、ナミやロビンとはまた異なるベクトルで「いい女」すぎる、魅力あふれるマダムキャラクターたちに焦点を当ててみたい。
※本記事には作品の内容を含みます
■ぼったくりすら魅力に? ミステリアスな色香漂う「シャッキー」
シャボンディ諸島で「シャッキー’S ぼったくりBAR」を営むシャクヤク、通称シャッキー。
億超えの賞金首である若手海賊たちが続々と集結し、一触即発の空気が漂う島内で、主人公のモンキー・D・ルフィ率いる麦わらの一味がコーティング職人を捜して店を訪れた際に彼女は姿を現した。
艶やかな黒髪ボブ、タイトな装い、そして優雅に煙草を燻らす彼女は、初登場時から他のキャラクターとは一線を画す「格別のいい女」感に満ちていた。
血気盛んなルーキーたちとは対照的に、ゆったりと構えるシャッキーの知的で余裕たっぷりな佇まいは、まさに大人の魅力そのもの。ルフィを「モンキーちゃん」と呼び、トニートニー・チョッパーやブルックを軽く手玉に取る茶目っ気もたまらない。
そして、その正体も文句なしに規格外である。元ロジャー海賊団副船長「冥王」シルバーズ・レイリーの公私にわたるパートナーであり、先々代の「アマゾン・リリー皇帝」にして「九蛇海賊団元船長」という驚愕の肩書きを持つ。
海軍や黒ひげ海賊団の襲撃によって窮地に陥ったボア・ハンコックたちを救うべく、レイリーと共に戦場へ駆けつけた姿は記憶に新しい。
さらに『週刊少年ジャンプ』(集英社)の最新展開で示された衝撃の過去も含め、彼女の歩んできた激動の歴史を知れば、何気ない言葉の端々にまで、修羅場を越えてきた者だけが持つ深い説得力を感じられるはずだ。
若い才能を温かく、時に鋭く見守る慈愛の視線には、世界の荒波を知り尽くした者だけが到達できる「本物の余裕」が宿っている。
■139歳の現役にして最高の医者「Dr.くれは」
続いて紹介するのは、ドラム島で「ドクトリーヌ」と畏怖される天才医師、Dr.くれはである。
雪深い冬島において、病に倒れたナミを救うために登場した彼女は、139歳という年齢を微塵も感じさせない引き締まった肉体と、極寒の地での大胆なへそ出しルックという衝撃的な姿で読者の度肝を抜いた。
彼女の「いい女」たるゆえんは、医者としての圧倒的なプライドにあるだろう。「ハッピーかい?」という彼女のおなじみの問いかけは、数多の命を見つめ続けてきたからこその真摯な言葉だ。一見破天荒な振る舞いの裏には、常に患者へ「生きる覚悟」を求める彼女なりの誠実さが隠れている。
そして涙なしには語れないのが、やはり愛弟子チョッパーとの別れのシーンだろう。海賊として旅立つことを決意したチョッパーに対し、あえて大反対する悪役を演じてその背中を押し、「湿っぽいのはキライでね」と雪空の下で強がる姿。そこには単なる師弟関係を超えた、不器用ながらも深い「母親の愛」があふれていた。
亡きDr.ヒルルクの遺志を継ぎ、ドラムロッキーに満開の桜を咲かせたクライマックスは、作中屈指の名場面である。
かつてヒルルクがあまりの美しさに目を奪われ、極寒の冬島に咲かせようとしていた奇跡の桜を再現し、「行っといで バカ息子…」と桜吹雪の中で愛弟子を送り出した彼女の生きざまは、いかなる若きヒロインにも引けを取らない、凛とした美しさに満ちていた。


