■スタンド使いが密集する“奇妙”な街『ジョジョの奇妙な冒険 第4部』杜王町
最後は荒木飛呂彦氏の漫画『ジョジョの奇妙な冒険 第4部 ダイヤモンドは砕けない』の舞台「杜王町(もりおうちょう)」だ。M県S市に位置する人口約5万3000人を抱える地方都市で、太平洋に面した豊かな自然と、特産品の牛たんのみそづけをはじめとする美しい景観に恵まれている街だ。
杜王駅から東側には主人公・東方仗助が住む市街地、北には「ボヨヨン岬」がある海岸線が続く。一見すれば誰もが住み心地の良さを感じる街だが、その平穏な表層のすぐ下には、文字通り“奇妙”な現実が潜んでいる。
この町には「スタンド使い」と呼ばれる異能力者が高い密度で存在しており、普通に道を歩いているだけで彼らの特殊能力によるトラブルに巻き込まれ、非日常の戦いへと引きずり込まれるリスクが付きまとう。
さらにコンビニ「OWSON(オーソン)」の隣には、現世とあの世の境界である「決して振り返ってはいけない小道」までもが存在する。もしここに住めば、高確率で“奇妙な体験”をすることは避けられないだろう。
そして、この町を「正直住みたくない」と言わしめる最大の要因が、15年もの間、町に潜伏し続けていた連続殺人鬼・吉良吉影の存在である。彼もまた強力なスタンド使いであり、“植物の心のように平穏に生きたい”と願いながら、善良な隣人としてごく普通に社会に溶け込み、その裏で静かに惨劇を繰り返していた。全国平均の5倍以上という異常な行方不明者数が、この町に横たわる恐るべき事実を物語っているのだ。
さらにいえば、この町ではいつどこから「弓と矢」が放たれるか分からない。運命に選ばれてスタンド能力を授かるか、それともその力に耐えきれず命を落とすのか……。杜王町で暮らすには、そんな死と隣り合わせの覚悟さえも必要になるのかもしれない。
殺人事件が当たり前のように起こる米花町、疑念が人間関係を静かに蝕んでいく雛見沢村、穏やかな日常のすぐ隣に“奇妙”が潜む杜王町。今回取り上げた3つの街は、それぞれ危険性のタイプこそ異なるものの、平和に見えた日常がある日突然、理不尽にひっくり返るという点では共通している。
住民として住むにはあまりに過酷な場所ばかりではあるが、「正直住みたくない」と思わせる危うさこそが、作品の放つ抗いがたい引力なのだろう。だからこそ我々は今日もまたページをめくり、これらの街を訪れてしまうのだ。


