■あの星が流れた! 彗星を見て「誰かが死んだことを悟った」虫の知らせ

 次は昭和のバトル漫画によく見られた、夜空の星の動きから仲間の死や危機を悟るという、「虫の知らせ」を紹介したい。

 原作・武論尊さん、作画・原哲夫さんによる『北斗の拳』は、星に運命をなぞらえる象徴的なシーンが多い。

 その1つが、主人公・ケンシロウの兄・トキが命を落とす場面だ。トキが病の身を押して拳王軍の将軍・リュウガと戦い、一撃されたまさにその時、ケンシロウと宿敵・ラオウの頭上に一筋の彗星がカッと流れる。それを見たケンシロウは不吉な予感にハッと息を呑み、ラオウは「とうとう地に落ちるか……」と、それぞれトキの死を予見するのであった。

 また、車田正美さんの『聖闘士星矢』においても、仲間の死を天体の動きで察知する場面がある。

 主人公・ペガサス星矢をはじめとした青銅聖闘士たちが黄金聖闘士たちと戦う場面にて、ドラゴン紫龍は山羊座のシュラとの戦いで宇宙の塵となる。その際、紫龍の小宇宙(コスモ)の光が天高く昇り、消えていくのを見て、残りの仲間は紫龍の死を覚悟するのであった。

 両作品ともに星座や星が物語のモチーフになっていることもあり、こうした天体現象を用いたドラマチックな演出が用いられたのだろう。ただし、これらの「虫の知らせ」は必ずしも正確ではないのが面白いところだ。

 死んだと思われたトキも紫龍も、後の物語で生きていたことが判明する。やはり流れ星など空の変化で人の死を予測するのは、少々無理があるのかもしれない?

■まるでテレパシー!? 双子が痛みを感じた虫の知らせ

 最後は、双子ならではの特殊な「虫の知らせ」を見ていきたい。それは、離れた場所にいるにもかかわらず、片方の身に起きた危機や痛みをもう片方が同時に感じ取るといった、テレパシーのような描写だ。

 小花美穂さんの『パートナー』は、双子の高校生姉妹が主役のストーリーだ。双子の桜沢苗と萌は、想いを寄せる人をめぐり喧嘩をしてしまう。翌日、萌に謝ろうとしていた苗だったが、突然全身に悪寒のようなものが走り、持っていたカップとソーサーを落として割ってしまう。するとその直後、萌が交通事故に遭ったという知らせを受けるのだ。苗が感じた悪寒は、萌が事故にあった衝撃とシンクロしていた。

 また、テレビドラマ化もされた津雲むつみさんの『花衣 夢衣』は、激動の昭和を生きた双子姉妹・真帆と澪の生涯を描く物語だ。

 作中、ある事情で澪と入れ替わっていた真帆は米兵に襲われる悲劇に見舞われる。その最中、何も知らないはずの澪自身も足が震え胸が痛くなり、息ができないほどの衝撃を体感するのである。

 このように、双子をテーマにした作品では、物理的な距離を超えて感覚を共有する双子ならではの「虫の知らせ」が描かれることが多い。それはまるでテレパシーのようであり、双子の持つ特殊な絆を象徴する不思議な現象として表現されているのだ。

 

 このようにかつての人気漫画には、現実ではなかなか体験できないような「虫の知らせ」がよく登場していた。コップを落としたり、流れ星で仲間の窮地を悟ったりと、今となっては懐かしさを感じる描写も多く、これらはキャラクターに起こっている危機を効果的に読者に伝え、なお且つ登場人物間の強い絆を表現するための印象的な演出であったように思う。

 これからは時代の変化とともに、AIなど現代ならではの「虫の知らせ」が登場するかもしれない。今後、物語の中で描かれるピンチを知らせるサインが、どのように描かれるのか注目していきたい。

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