1990年代のヤンキー漫画を語るうえで欠かせない作品が『疾風伝説 特攻の拓』だ。1991年から1997年まで原作・佐木飛朗斗氏、作画・所十三氏というコンビによって『週刊少年マガジン』で連載された名作だ。
本作は、いじめられっ子だった少年・浅川拓が不良たちとの出会いを通じ、過酷な世界に身を投じていく物語。暴走族の抗争、凄惨な喧嘩描写、そして独特の言語表現が大きな話題を呼んだ。連載終了後も復刻版や続編、スピンオフが制作されるなど、今もなお絶大な人気を保ち続けている。
そんな『特攻の拓』において、ファンの間で長年熱く語られてきたのが「作中最強は誰なのか」というテーマである。
本作の特徴は、体格や骨格といった常識がほぼ意味をなさない点にある。小柄だろうが華奢だろうが、その瞬間に一番“キレた”ヤツが一番強い。『特攻の拓』の登場人物たちは、キレればキレるほど強くなる。このぶっ飛んだ法則が作品全体を貫いているのだ。
その前提のもと、今回は作中での対戦成績、パワー、テクニックに加え、凶暴性、凶器の使用、ブチギレによる覚醒まで含めた「何でもアリ」の条件で最強キャラクターを検証していく。
※本記事には作品の内容を含みます
■作中トップクラスの実力者15名
最強キャラクターを選ぶにあたって、まずは作中で目立った活躍を見せた15名の候補をあげておこう。
爆音小僧七代目頭・鮎川真里(マー坊)、朧童幽霊(ロードスペクター)初代総長・榊龍也、麓沙亜鵺(ロクサーヌ)十一代目頭・緋咲薫、元獏羅天“風神雷神”コンビのヒロシとキヨシ、外道の鳴神秀人、魍魎九代目統領・一条武丸、夜叉神総会長・鰐淵春樹、極悪蝶総長・慈統享介、相州聖龍連盟會の會長・八尋渉、「灰色の亡霊(グレイ・ゴースト)」こと高遠陸夫、六代目爆音小僧のメンバー・那森須王、美麗の初代頭・一色大珠、初代「極悪蝶」の頭・来栖奈緒巳、そして獏羅天の“龍神”天羽セロニアス時貞である。
ここから本編の描写に基づいて絞り込んでいくと、7名が最強候補から外れる。マー坊、龍也、緋咲、ヒロシ、キヨシ、大珠、須王だ。
ヒロシとキヨシは単体でも総長クラスの実力者だが、極悪蝶のNo2・那智の強さを前に驚愕する描写や、天羽に2人で対応していた点が決定打となった。キヨシのほうは片手で200キロ超えの単車を持ち上げるほどの怪力だが、「最強」を語る上では一歩及ばない。
緋咲を外した理由は明確だ。彼自身が天羽について「超“強”ェゾ? セロニアスは……」と評し、はっきり格上と認めているからだ。頭クラス同士の最強議論において、当人の自己評価がここまで明確な例は珍しく、これ以上の説明は不要だろう。
マー坊は作中屈指の怪力を誇り、「あんまチョーシくれてっと ひき肉にしちまうよ!」という名言に違わぬ迫力を持つ。しかし、須王に投げ飛ばされ、来栖の肘打ちを食らい、キレた武丸には後れを取っている。龍也も喧嘩のテクニックは一級品ながら、陸夫にあしらわれたり、不意打ちとはいえ来栖に失神させられ引きずられたりと、噛ませ犬的なシーンが散見される。
大珠はヘラヘラモードと薬物で“キマった”状態で強さが変わるが、秀人との激突後に「大魔王みたいに強かった」とコメントしているため、秀人が優勢だったと判断できる。また、須王は喧嘩よりも走り屋としての側面が強く、ここでは除外した。
■続いて候補から外れるのは…
続いての脱落者たちが、秀人、鰐淵、慈統、八尋、高遠の5名である。
秀人はステゴロ(素手)ルールであれば、おそらく最強クラスだろう。しかし、いかんせん正統派すぎるのが弱点。理性的であり、いざとなったら“人を殺せる”レベルの異常性までは持ち合わせていないように思える。また、大珠との戦いで追い込まれた場面もあり、助けが入らなければ敗北していた可能性も否定できない。
慈統はチームのキャッチフレーズ「踊る喧嘩の黒揚羽」にふさわしいマッチョな風貌で、フィジカルなら最強格だろう。しかし、武丸との戦いでは互角に見えつつも、彼をブチギレさせるには至らずやや劣勢だった。
鰐淵は名ゼリフ「“事故”る奴は……“不運(ハードラック)”と“踊(ダンス)”っちまったんだよ……」に象徴されるカリスマを持つ。しかし、来栖と戦う前に「勝てるのか?」と不安を見せ、かかと落としを食らって出血している点がマイナス評価だ。最終的に勝ちはしたが、相手の来栖が万全の状態ではなかったため、そのハンデなしだったら結果は逆だったかもしれない。
八尋は1500人もの湘南の族をまとめた実力者であるものの、喧嘩のシーンが少なく実力は未知数。しかし、那智を赤子同然に捻り潰しており、その那智が小説版で慈統の歯を叩き折っていることを踏まえると、慈統よりは強いと推察できる。ただ、那智でも一撃で倒せてはいないため、No2を瞬殺できる武丸や来栖と比べて力不足感は否めない。仲間だった吾代の不意打ちを食らったときの「鼻血ブー」の描写も、かなり印象が悪かった。この後の上位陣であれば、そこから難なく反撃を加えたはずだ。


