■白鳩製薬の正体と組織との関係性

 厚司がかつて勤めていた「白鳩製薬」は、約25年前に倒産している。その原因について灰原は、“もっと大きな会社が買収しようとしてうまくいかなかったから”と語っている。このときは明言されていなかったが、この“大きな会社”とは組織のボスが創設した「烏丸グループ」のことである。

 白鳩製薬の倒産後、宮野夫妻は「宮野医院」を開業し、町医者として静かな生活を送るようになる。だが、烏丸グループからの執拗な勧誘が続き、エレーナが志保を妊娠したことを機に、研究の全面的なバックアップを条件として組織の研究施設に入ることになる。

 組織が、なぜそこまで白鳩製薬および厚司に執着したのか。その背景にはAPTX4869の原型となる研究や、組織の極秘プロジェクトの存在が深く関わっている可能性が考えられる。ただし、その全貌はいまだ明かされていない。

 また、厚司がかつて学会で「マッドサイエンティスト」と呼ばれていた理由も定かではない。時期的に言えば白鳩製薬で働いていた頃の話だが、そこで研究していた薬が危険なものだったのだろうか。しかし、エレーナがその研究を「あなたの夢」と呼んで応援する姿からは、とてもそんな代物には思えない。

 いずれにせよ、厚司が白鳩製薬でどのような研究をしていたのかが判明すれば、組織のプロジェクトの核心に迫る手がかりとなるだろう。

 

 原作コミックス第18巻で初登場して以降、灰原哀は一貫して物語のキーパーソンであり続けてきた。黒ずくめの組織からの逃亡者であり、天才科学者である彼女は、コナンや読者が想定する以上の重大な秘密を握っているはずだ。

 だからこそ彼女は必要以上に語らず、必要なときにのみ、短い言葉で進むべき方向を示す。その沈黙は弱さのあらわれではなく、自身と周囲の人々を守り、生き延びるための選択なのだろう。

 そんな灰原にまつわる伏線が1つずつ明かされるとき、『名探偵コナン』の物語はいよいよ核心へと踏み込んでいくに違いない。

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