『名探偵コナン』灰原哀にまつわる「意味深描写」の数々 「黒ずくめの組織に関する重大伏線!?」「APTX4869が秘めた真実とは?」の画像
青山剛昌『名探偵コナン 灰原哀セレクション(上巻)』(小学館)

 青山剛昌氏による『名探偵コナン』は、1994年の連載開始以来、『週刊少年サンデー』(小学館)で連載が続く人気漫画である。

 本作の主要人物の1人、灰原哀(本名:宮野志保)。彼女はもともと「黒ずくめの組織」の科学者だったが、今は主人公・江戸川コナンを支える良き協力者だ。その過去から、コナンが知らない組織の重大な情報を知っているとみられるが、彼女はすべてを語らず、時に曖昧な言葉ではぐらかし、時に沈黙を選んできた。

 今回は、そんな灰原にまつわる数多くの伏線の中から、今後の展開に直結しうる重大な謎を整理し、あらためて振り返っていく。

 

※本記事には作品の内容を含みます。

■燃えたはずの「MOディスク」の内容は?

 灰原が、物語の初期から現在に至るまで一貫して“隠し続けている”情報の1つが、「MOディスク(光磁気ディスク)」に記録されたAPTX4869のデータだ。

 原作コミックス第24巻収録の「黒の組織との再会」でのこと。灰原は誘拐され酒蔵に閉じ込められた際、組織の一員であるピスコのパソコンから薬のデータをMOディスクにコピーすることに成功する。

 しかしその後、酒蔵で火災が発生。灰原は、このときMOは“燃えてしまっただろう”と話していたが、実際には焼け焦げた状態で回収されていたようだ。続く第25巻の「命がけの復活」では、灰原が黒く汚れたMOをひそかに隠し持っている場面が描かれている。彼女はこの事実をコナンに明かしていないようだが、一体なぜだろうか。

 MOの中には、薬に関するデータだけでなく、組織関連の重大情報が含まれている可能性もある。灰原がその存在をあえてコナンに明かさないのだとしたら、真実を知った彼が危険にさらされるのを避けたいのかもしれない。

 これまで灰原はコナンに対し、APTX4869の危険性や組織の非情さについて繰り返し語ってきたが、核心的な情報は隠し続けている。コナンが真相に迫ろうとするたび、深入りしないよう警告してきた。

 それは単に恐怖から口を閉ざしているのではない。MO内のデータが悪用されるのを防ぎ、そして何より、これ以上コナンを危険に巻き込まないための選択と考えたほうが自然だ。

 しかし、今後組織との戦いが激しさを増していけば、彼女が握っているデータが重要なカギとなる可能性は高い。初期に張られた伏線が最終局面で回収されるという、壮大な展開も待っているかもしれない。

■両親(宮野夫妻)にまつわる謎

 灰原の過去を語るうえで欠かせないのが、彼女の両親、宮野厚司と宮野エレーナの存在だ。

 2人は公式には、志保が生まれて間もない頃、研究所の火災事故で死亡したとされている。しかし、その最期については、いまだ多くの疑問が残されている。宮野夫妻がこの世を去った理由は単なる事故ではなく、組織の“触れてはいけない領域”に踏み込んだ結果だった可能性が高い。

 この死亡の真相と並んで注目されるのが、母・宮野エレーナの異名である。「ヘルエンジェル… 地獄に堕ちた天使…」灰原が口にするこの呼び名だけを聞けば、冷酷非情な“組織の科学者”という印象を受ける。

 しかし、娘の志保のために残したカセットテープや、彼女と親交のあった安室透の回想シーンからは、エレーナのやさしくあたたかい人柄が感じられる。

 こうした本来善良な人間が組織の手に落ちたからという理由で、“堕ちた”と表現されたのか。あるいは、組織に身を置きながら何かを阻止しようとしたから、堕ちてなお“天使”と呼ばれたのか。その真の人物像は、依然として謎に包まれている。

 また、宮野夫妻は自分たちが開発していた薬について、「恐ろしい薬」と認識しつつも、「シルバーブレット(銀の弾丸)」という呼び名をつけていた。

 銀は古くより魔除けの効果があると信じられており、それを材料とする弾丸は“悪しき存在”を一撃で倒すものとされていた。そして、『名探偵コナン』におけるシルバーブレットとは、「組織を壊滅させうる存在」を指す言葉であり、作中でコナンと赤井秀一がその呼び名をつけられていた。

 組織にとって「シルバーブレット」は危険な存在のはずだが、エレーナはその呼び名について“願いを込めてこう呼んでいる”と話している。つまり肯定的な意味でその言葉を使っているのだ。このことから、宮野夫妻は組織に属しながら、その崩壊を願っていた可能性も考えられる。

 これらの謎は、灰原が極度に組織を恐れ、同時に憎んでいるのかを理解するうえでも欠かせない要素だ。宮野夫妻の真実が明かされる時、灰原哀というキャラクターの核心が、より鮮明になるはずである。

  1. 1
  2. 2
  3. 3