■ラムとの17年越しの因縁が明確に

 浅香とラムの敵対関係は、脇田兼則(=ラムの仮の姿)との対峙で決定的となる。FILE 1148「混沌の因縁」にて、浅香は脇田の声を聞いた瞬間にその正体を確信し、17年来の因縁が物語の前面に押し出される流れとなった。

 こうして、長年積み重ねられた伏線の多くは、104巻以降で一気に回収されていく。若狭留美は「ラム候補」というミスリードの役割を終え、「ラムを追う復讐者」レイチェル・浅香として、物語の中心人物となったのである。

 彼女の行動原理のすべては、アマンダと羽田を奪ったラムへの復讐心に集約される。浅香は羽田の言葉通り、まるで将棋の「角行」のように遠くから敵を睨み続け、機が熟すのを待っていた。ラム側もまた浅香の存在を危険視しており、二人の対峙はまさに、長きにわたる因縁が初めて激突する瞬間であった。

 浅香は組織の狙撃手を返り討ちにする活躍も見せており、その実力は今後の戦いでも鍵となるだろう。浅香と直接対峙した以上、ラムの脇田兼則という偽装人格ももはや保てなくなっていくはずだ。ついにラム本人が動き出すであろう、浅香との「第二ラウンド」から目が離せない。

■コナン陣営との距離は?

 浅香は敵でも味方でもない“第三勢力”ではあるが、その行動原理は一貫して「大切な人を奪ったラムへの復讐」である。帝丹小学校に潜入していたのも、コナンという少年が“組織を倒せる人間かどうか”を見極めるためともとれる。

 彼女の推理力は作中でもトップクラスであり、その鋭さは時にコナンをも上回るほどだ。そんな彼女がコナンを“見極める価値がある存在”として評価している以上、完全な味方ではなくとも、目的が一致する局面で歩調を合わせる「並走関係」を築く可能性は十分考えられる。

 しかし、浅香は目的のためには手段を選ばないところがあり、場合によっては無関係の人間を巻き込むこともいとわない。ある意味では、組織と同じくらいの要注意人物といえるかもしれない。それを踏まえると、コナンたちと真の意味で協力関係を結ぶことは難しそうだ。

 

 若狭留美=レイチェル・浅香は、単純な「味方」ではない。そしてもちろん、黒ずくめの組織の味方でもない。彼女は正義のためではなく、“自身の復讐のため”に組織を追う第三勢力である。

 17年間握りしめた「角行」の駒と、羽田浩司から託された言葉。「遠見の角」として睨み続けてきた因縁の相手との対決は、物語が核心へ進むほど重要性を増していくはずだ。彼女が最後に放つ一手が、ラムとの決着を大きく左右することは間違いないだろう。

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