「魅惑のテノール」にオタク女子がメロメロ…昭和アニメのレジェンド声優「塩沢兼人」の忘れられないイケメンたち【昭和オタクは燃え尽きない】の画像
DVD『銀河英雄伝説 2』(徳間書店) (C)田中芳樹・徳間書店・徳間ジャパンコミュニケーションズ・らいとすたっふ・サントリー (C)加藤直之

 今から44年前の1981年12月19日は、葦プロダクション・国際映画社製作の劇場版アニメ『宇宙戦士バルディオス』が公開された日です。

 同映画は東京12チャンネル(現・テレビ東京)で1980年に放映されたテレビアニメをもとに、前半がテレビ再編集、後半が新作カットを中心に構成されたロボットアニメ作品。

 当時を知る人なら、劇場版の主題歌『素顔のままで』(歌唱・TONYさん)がバックに流れるCMで、主人公マリン・レイガンの「アフロディア、君とだけは戦いたくなかった」という甘く切ない声を何度も耳にしたかと思います。

 その声の主こそ、唯一無二の甘いテノールと高い演技力を兼ね備えた声優・塩沢兼人さんでした。

 塩沢さんといえば青二プロダクションに所属し、やや陰のある美形キャラクターを中心に、クセモノからキワモノ役まで幅広く演じてきた人気声優。特に昭和時代は数々のイケメン役を演じ、多くの女性ファンを夢中にしてきました。

 今回は筆者を含む、昭和のアニメ女子のハートをつかんで離さなかった塩沢兼人さんの魅力をあらためて振り返りたいと思います。

■ブンドル局長にクラヴィスさま…多くの女性をとりこにした強く気高い美形キャラ

 昭和のアニメ好き女子にとって声優・塩沢兼人さんといえば「美形キャラ」の代名詞のような存在。とくに筆者が強く意識するようになったのは、テレビアニメ『戦国魔神ゴーショーグン』(1981年)に登場する敵・ドクーガ三幹部の1人「レオナルド・メディチ・ブンドル」役でした。

 金髪美形の貴族というブンドルは、自身の美貌を誇る生粋のナルシストで、戦闘時にはクラシック音楽を流して「美しいぞ、我がブンドル軍団」と自画自賛。敗北時、ドクーガに負わせた損失を支払う際に「潔く一括払いだ!」と言い切るコミカルな面は、塩沢さんの艶のある声とのギャップで増幅され、いっそう笑えました。

 同じ美形キャラでもアニメ『北斗の拳』(1984年)で塩沢さんが演じた「南斗水鳥拳のレイ」は、一見クールそうに見えて内面は義にあつい、ケンシロウの心強い味方です。

 そんなレイは、ラオウとの戦いで死に至る秘孔を突かれて余命わずかになりながらも、愛するマミヤのために同門のユダと対決します。

 その戦いで勝機を見いだしたレイが「うおおおおおおぉっ!」と荒々しく叫び、南斗水鳥拳の奥義「飛翔白麗」を繰り出すときの塩沢さんの演技は圧巻のひと言。

 そしてユダを打ち倒すと、それまでの雄々しさから一転、愛するマミヤに「たとえ一瞬でもいい、女として生きろ」と諭す慈愛に満ちた声に涙腺崩壊……。このシーンの印象があまりにも強く、筆者はいまだに塩沢版レイの声に魅了され続けています。

 切なさに満ちた美形キャラなら、恋愛シミュレーションゲーム『アンジェリーク』(1995年 PC-FX版より声が実装)に登場する「闇の守護聖クラヴィス」も忘れられません。長い黒髪と黒と紫を基調とした衣装をまとった、寡黙で近寄りがたい男性です。

 主人公アンジェリークに対して「お前ごときが民を導くなどとは、不遜なことだと思わないか?」などと辛らつな言葉を投げかけますが、塩沢さんの声色から、実は彼女とのやりとりを楽しんでいるのが伝わってきます。

 塩沢版クラヴィスの優しさや言葉の真意を知るにつれて、いつしかあきれ果てた声さえ聞くのがうれしくなってくるのです。

 また、厳しく導いた人物という意味では、『聖闘士星矢』(1986年)で塩沢さんが演じたムウ役も同様かもしれません。ジャミールでの初登場時は得体の知れない気難しい人物に見えましたが、十二宮での再会時は心強い牡羊座の黄金聖闘士として、落ち着いた色気ある声色で神秘的なムウを演じていました。

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