『GANTZ』のキーアイテム「黒い球(ガンツ)」とは結局何だったのか 映画版を観てもわからないその正体の画像
GANTZ -ガンツ- Vol.1 [DVD] (C)2004 奥浩哉/集英社 GANTZ Partner

 2000年から2013年まで『週刊ヤングジャンプ』(集英社)で連載された、奥浩哉さんによる『GANTZ』。漆黒の球体――通称ガンツによって、死んだはずの人間が異形の“星人”との死闘に駆り出されるSFアクション作品だ。単行本は全37巻、累計発行部数は2400万部を突破し、2011年には二部作で実写映画化され大ヒットを記録した。

 黒い球は作中で異様な存在感を放つが、映画版ではその正体は深く描かれなかった。そのため、多くの観客は「ガンツとは何だったのか」という疑問を抱えたままだっただろう。しかし原作では、この黒い球が単なる“謎の装置”ではなく、宇宙規模の歴史・文明の衝突に関わる高度なテクノロジーであり、その背後には人類の理解を超えた存在がいたことが明かされている。

 

※本記事には作品の核心部分の内容を含みます

■原作終盤で明かされた“黒い球”の正体

 世界各地に存在する直径1メートルほどの黒い球・ガンツは、星人を倒すミッションを課し、武器やスーツを提供、必要に応じて人間を“転送”するなど、物語の戦いにおいて不可欠な役割を担う。しかし、誰がどのような目的で作ったものなのかは、長らく謎に包まれていた。

 その真相は原作の終盤、単行本36巻にてついに明かされる。ガンツは人類が独自に開発したものではなく、その基盤となった技術は異星からもたらされたものだったのだ。そしてその経緯には、宇宙規模の歴史がかかわっていた。

 作中にはねぎ星人、田中星人、あばれんぼう星人、おこりんぼう星人、オニ星人など、さまざまな星人が登場する。なぜ、主人公の玄野計や加藤勝たちは何度も「部屋」に呼ばれ、彼らと戦わされてきたのか。その答えは、「真理の部屋」にて登場した神のような異星人、通称“神星人”の口から、こう語られた。

 「ある惑星系が消滅の危機にあッた」「地球が移住先に定められ もう30年以上前から 少しずつ移住は始まッていた」と。

 つまり、玄野たちが戦っていたのは、移住先として地球を狙う異星からの“移民”たちだったのだ。

 そして神星人は、「地球より前に移住先に選ばれた惑星の住人」であり、すでに侵略を退けていた。彼らは次に地球が標的となることを知り、侵略者を撃退するための最低限の軍事技術情報を信号の形で地球へ送信。その信号を受け取ったドイツの富豪の娘が自らの資産で作り、世界中に設置したものこそ、黒い球「ガンツ」の正体だった。

 しかし重要なのは、神星人が提供したのはあくまで「軍事技術だけ」だったという点だ。点数をつけるゲームのようなやり方は地球人が勝手にしたことであり、残虐なゲーム性が追加されたことでガンツの存在は秘匿された。

 また、神星人は滅びる地球人への同情から手を差し伸べてくれたのかというと、そうではない。彼らは単なる観察者であり、“地球そのもののある程度の秩序”を保つことができればそれでよかったのだと言う。むしろ、彼らにとって人類は昆虫と変わらない矮小な存在であり、その命はチリやゴミと何ら変わらないと断じるのだった……。

 

 このように、ガンツの正体やその背景には、映画版では描かれなかった壮大な設定が存在した。その他にも設定や展開、そして結末に多くの違いがあり、それぞれの作品で受け取る印象は大きく異なる。

 映画版で『GANTZ』の世界に魅了されたファンも、原作を読むことで物語の深みをよりいっそう感じられるだろう。ぜひ双方をチェックし、その違いを味わってほしい。

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