長い歴史を誇る『スーパー戦隊シリーズ』では、ヒーローだけでなく、怪人の攻撃もまた、回ごとに趣向を凝らしたユニークなものばかりだ。その中には、思わず「まさか、そう来るか!?」と驚かされるような奇妙な戦法で、ヒーローたちを翻弄した名エピソードも存在する。
今回は、そんな“クセが強すぎる攻撃”がさく裂した回を厳選してピックアップ。自由な発想と展開の意外性が結果的にシュールな笑いを生み出した、『スーパー戦隊シリーズ』の歴史に残る「伝説のギャグ回」に迫りたい。
※本記事には各作品の内容を含みます
■言葉が凶器に!?『侍戦隊シンケンジャー』衝撃の悪口攻撃
まず紹介するのは、シリーズ第33作『侍戦隊シンケンジャー』の第6話「悪口王」である。
登場するアヤカシ・ズボシメシの能力は、“本人が言われて最もつらい悪口”を突き刺し、その精神的ショックをそのまま物理的ダメージへと変換してしまうというものだ。
しかも、その“急所ワード”の選び方が絶妙かつ容赦ない。池波流ノ介(シンケンブルー)には「ファザコン」、白石茉子(シンケンピンク)には「一生独身」、谷千明(シンケングリーン)には「おちこぼれ」というように……。気の毒ではあるが、敵の妙なセンスに思わず苦笑してしまう。
悪口を浴びるたびに仲間たちが傷つき、吹き飛ばされていく中、花織ことは(シンケンイエロー)だけは、なぜかまったくダメージを受けない。“ドジ、アホ、バカ、まぬけ、どんくさ女”といった罵詈雑言を浴びせられても微動だにしない彼女の強さ。
その理由は、幼い頃から悪口に耐えてきた経験、そしてなにより病気の姉に代わってシンケンジャーになったという背景と、「何があっても笑って生きる」と誓った揺るぎない信念によるものだった。普段はのほほんとした彼女の、戦士としての芯の強さの理由が分かる印象的なエピソードだ。
そして痺れるのが、志葉丈瑠(シンケンレッド)に向けられた悪口が「大ウソつき」だった点だ。この一言は、実は物語後半の核心へとつながる重大な伏線となっている。第6話という番組序盤で登場した発言ではあるが、あとになって「あれはそういう意味だったのか」と気づかされる、実に巧みなセリフであった。
■透真のキャラ崩壊…『快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー』全身レオタード姿で強制エアロビ!?
続いては、シリーズ第42作『快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー』第27話「言いなりダンシング」を紹介する。ルパンレンジャーの中でも大人でクールな宵町透真(ルパンブルー)が、とんでもない目に遭う回である。
物語は、透真が武突参流古武術の創始者を名乗るいかにも怪しい男・小紫庄右衛門に誘われ、入門してしまうところから始まる。もちろん庄右衛門の正体はギャングラー怪人のピョードルであり、その能力は“言葉で相手を強制的に操る”という厄介なものだった。
そこへ、同じく弟子入りし、3週間で師範代になったという陽川咲也(パトレン2号)も登場。始まった稽古の内容は、なんと全身レオタード姿での全力エアロビクスだった。
お調子者の咲也はまだしも、普段は冷静沈着な透真がレオタード姿でリズミカルに踊り出すギャップは強烈。様子を見に来た早見初美花(ルパンイエロー)は、“見てはいけないものを見ている気がする”と、渋い顔をしていた。
クールな透真のまさかの姿は、笑いを誘うと同時に「どうした透真!?」と、見ているこちらまでつい心配になってしまうほどだった。
黄色いヒヨコの怪人態に、ぽっちゃりしたおじさんの人間態という愛嬌たっぷりの見た目のピョードルだが、その攻撃は意外と危険だ。言葉で咲也を操り、パトレンジャーの基地である国際特別警察機構(GSPO)に爆弾を仕掛けさせようとするなど、能力をフルに使った行動は凶悪そのものだった。
最終的に異変に気づいた透真の活躍により、なんとか被害は食い止められることとなったが、クールな二枚目キャラの男が全身レオタード姿で踊る姿の衝撃度は絶大だった。シリーズ屈指の「ギャグ回」として、多くのファンの記憶に残る1話である。


