『スーパー戦隊シリーズ』には、後年のファンにも語り継がれる名シーンが数多く存在する。中でも特に視聴者に衝撃を与え、重い意味を持つのが「ヒーローの殉職回」だろう。
子ども向け番組としては異例ともいえる展開であり、50年以上にわたるシリーズの歴史においても、ヒーローが命を落とすエピソードはそこまで多くない。だからこそ、1話1話のインパクトは大きく、視聴者の記憶に深く刻まれているのだ。
今回は、その中でも特に忘れがたい3つのヒーローの殉職シーンを取り上げ、彼らの壮絶な最期と、当時の衝撃を改めて振り返りたい。
※本記事には作品の核心部分の内容を含みます
■シリーズ初の殉職者!『秘密戦隊ゴレンジャー』2代目キレンジャー/熊野大五郎
『スーパー戦隊シリーズ』の記念すべき第1作『秘密戦隊ゴレンジャー』。
カレー大好きでお馴染みの初代キレンジャー/大岩大太の後任として登場したのが2代目キレンジャー/熊野大五郎だ。彼は陽気で愛嬌のあるキャラクターで愛されたが、同時に“シリーズ初の殉職者”として視聴者の記憶に深く刻まれることになった。
彼の最期が描かれたのは、第67話「真赤な特攻!! キレンジャー夕陽に死す」。このエピソードでは、イーグルの新兵器「カビカX」が黒十字軍の怪人・カンキリ仮面に奪われてしまう。その原因は熊野の痛恨のミスであり、彼は強い責任感から単身で奪還へ向かった。
激闘の末、熊野はカビカXを消滅させることに成功するが、カンキリ仮面の必殺技「カンキリカッター」を受けて致命傷を負ってしまう。そして仲間たちに囲まれながら、彼は「今度から油断しねえよ」と最期の言葉を残し、静かに力尽きるのだった。
キレンジャー不在となったことで、5人揃わなければ使えない必殺技「ゴレンジャーハリケーン」が使用不能となったゴレンジャー。チームは絶体絶命の危機に陥るが、そこに駆けつけたのが戦線を離れていた初代キレンジャー・大岩であった。
この劇的な展開の背景には、実は制作サイドの事情があったことを当時のプロデューサーが明かしている。初代キレンジャー役の畠山麦さんがスケジュールの都合で一時的に番組を離れたため、その穴を埋める形で登場したのが熊野大五郎だったというのだ。そして畠山さんの復帰に合わせて、熊野は殉職という形で物語から退場することになったのである。
しかし、そうした制作事情を超えて、熊野の犠牲が物語に生んだドラマ性は非常に大きく、当時の視聴者の心を強く揺さぶるものとなった。
■わずか10話で散った女性戦士!『超電子バイオマン』イエローフォー/小泉ミカ
『スーパー戦隊シリーズ』第8作『超電子バイオマン』に登場したイエローフォー/小泉ミカ。18歳の女性カメラマンである彼女は、勝ち気な性格と強い責任感でチームを支え、その活躍は視聴者に頼もしさを印象づけていた。
しかし、そんなミカを待ち受けていたのは、なんとスーパー戦隊史上初となる“女性戦士の殉職”という、あまりにも衝撃の展開だった。
物語序盤のクライマックスともいえる第10話「さよならイエロー」は、シリーズ屈指の衝撃作としてファンの間で語り継がれており、そのショックは今なお鮮烈である。
その原因となったのが、敵組織・新帝国ギアが開発した対バイオマン用の“反バイオ粒子”兵器「バイオキラーガン」である。これはバイオマンたちの力の源であるバイオ粒子を相殺できる効果を持つ、とんでもないチート兵器だ。巨大ロボであるバイオロボさえも機能停止に追い込むほどの絶大な威力で、まさにバイオマンの天敵といえる存在だった。
仲間が撃たれそうになった瞬間、ミカは迷わず身を投げ出して直撃を受ける。さらに、ピンクファイブをかばって2発目の攻撃を受けたことで、彼女のダメージは極限に達するが、その中でミカは、バイオキラーガンのエネルギーが残りわずかであることに気づく。
そして、ミカは残された力を振り絞り、バイオキラーガンの最後のエネルギーを自らの身で受け止め、無力化することに成功する。身を挺して仲間の命を守ったミカは、「みんな、バイオの力を信じて……」という言葉を託し、静かに倒れるのだった。
なお、この展開の裏には「小泉ミカ役・矢島由紀さんが突然姿を消した」という制作上の事情があったと言われている。その影響もあり、この第10話ではイエローフォーが終始スーツのままという異例の構成となっており、翌週には矢吹ジュンという新たなイエローフォーが加入することになった。


