■設備に頼らず難攻不落だったカサンドラ
原作:武論尊氏、作画:原哲夫氏による『北斗の拳』(集英社)には、「一度収容されたが最期 二度と生きて あの門をくぐることができない」と恐れられる監獄島がある。それが「鬼の哭く街」とも呼ばれるカサンドラだ。
カサンドラは外壁で囲まれた円状の街であり、広大な敷地を持つ。一見、それほど脱獄が難しそうには思えないが、これまで陥落したことは一度もないという。
その理由は衛士であるライガとフウガ、そして獄長のウイグルが脱獄者の前に立ちふさがるからだ。ウイグルは泰山流拳法、ライガとフウガは二神風雷拳の使い手であり、並の格闘家では相手にならない。
脱獄を試みた者はことごとく彼らによって返り討ちにされ、獄内に埋められてきた。力こそ正義の時代だからこそ、警備にそれほどの設備は必要はないのかもしれない……。
そんな難攻不落の監獄を解放したのが、主人公のケンシロウだ。彼はライガとフウガを味方につけ、北斗神拳でウイグルを倒してカサンドラ不滅伝説を終わらせた。まさに力だけですべてを解決する姿は、さすがとしかいいようがない。
『北斗の拳』には他に、地底特別獄舎「ビレニィプリズン」も登場する。羅漢仁王拳を使う巨人・デビルリバースさえ封じ込めていたことから、こちらもかなり厳重な監獄だったことがうかがえる。
■孤島に位置する州立グリーン・ドルフィン・ストリート重警備刑務所
荒木飛呂彦氏による『ジョジョの奇妙な冒険』(集英社)にも厳重な監獄が登場する。第6部「ストーンオーシャン」にて、主人公の空条徐倫が収容された「州立グリーン・ドルフィン・ストリート重警備刑務所」がそれだ。
この刑務所は海に浮かぶ孤島に位置し、本土とは道路1本でしかつながっていない。立地的には脱出は困難だろうが、特殊能力を使いこなす「スタンド使い」なら脱獄も可能に思える。
しかしそれを阻むのが、主任看守であるミュッチャー・ミューラー(ミューミュー)だ。彼女はプッチ神父から能力を与えられ、囚人のふりをして紛れこみつつ周りを監視している。
彼女のスタンド「ジェイル・ハウス・ロック」は、対象者が新たに記憶できることを3つまでに制限する能力を持つ。これにより、脱獄を試みる者は計画やルートを記憶できなくなり、脱出できなくなってしまうのだ。
徐倫はそんなスタンド能力を攻略して脱獄に成功したが、エンポリオ・アルニーニョの手助けがなければ不可能だっただろう。
このエピソードからも、『ジョジョ』の世界では精神や記憶に干渉する能力を持つ看守がいると、監獄からの脱出が極めて困難になることがわかる。
少年漫画に登場する監獄は、絶対に脱出不可能に思えるほど強固だからこそ、突破した時の爽快感も格別だ。特殊な環境の中、主人公たちがどのようにしてピンチを切り抜けるのか、その過程は読者を惹きつける大きな魅力となっている。


