自然体で“現代のくノ一”を演じた『忍者に結婚は難しい』菜々緒

 横関大さんの小説を原作としたドラマ『忍者に結婚は難しい』(2023年)は、現代の東京で暮らす“忍者夫婦”の日常を描いたユニークな忍者ラブコメである。

 本作で菜々緒さんが演じる草刈蛍は、表向きはごく普通の薬剤師として働く美人妻。だが、その正体はまさかの由緒正しき甲賀忍者の末裔なのだ。

 蛍の“忍者らしさ”は、日常のふとした行動に現れる。朝のジョギングでは自転車を軽々と追い越し、リビングではバランスボールの上で印を結ぶ。さらには、置いてあったクッションを見事な回転蹴りで吹き飛ばすなど、常人では考えられない身体能力を見せるのだ。

 そして、ひとたび任務となれば、黒ずくめの装いに身を包み、プロフェッショナルとして鮮やかに“仕事”を遂行するのである。

 菜々緒さんはインタビューで、蛍について“自分と性格が近い”と語り、“オフのときは黒ずくめで、蛍の衣装と一緒”、“普段から忍んで生きているので、役作りに苦労はしてない”と、冗談交じりに語っていた。役と本人の距離の近さが、この自然体の演技に繋がっているのだろう。

 特に圧巻だったのが、第6話で描かれた“夫婦ガチバトル”だ。蛍の夫・悟郎(鈴木伸之さん)は、普段は郵便局員だが、その正体は伊賀忍者の末裔である。

 そんな互いの正体を知ってしまった2人が、自宅で本気の戦闘を繰り広げるのだ。それは単なる夫婦喧嘩とは次元が違う。鍋つかみやフライパンといった日用品を武器にし、テーブルまでひっくり返しながの激しい攻防戦へと発展。忍者同士の超人的なバトルは、思わず息をのむ迫力だった。

 その後の物語は、敵対する忍者同士でありながら、愛し合う夫婦として揺れ動く関係性が深く描かれていく。菜々緒さんが演じた蛍は、まさに“現代のくノ一像”を鮮やかにアップデートした存在となった。

 

 今回紹介した3人の女優は、それぞれ違ったスタイルで「くノ一」の魅力を最大限に引き出していた。

 キレッキレのアクション、純粋な笑顔の裏に潜むギャップ、日常から非日常へ瞬時に切り替わるスイッチ。そのすべてが重なったとき、くノ一はスクリーンでひときわ眩しく光る“最強のヒロイン”になるのだ。

 次はどんな魅惑のくノ一が現れ、私たちをドキッとさせてくれるのだろうか。新たな刺客の登場を、ワクワクしながら待ちたい。

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