映画やドラマなど、数々の実写化作品には、多彩な武闘派キャラクターが登場する。戦闘を得意とする彼らはさまざまな手段で敵と戦い、個性的な技や武器、そして圧倒的な力で観客を魅了する。
その中でも、特異な輝きを放つ存在が「くノ一」だ。静かに獲物へ忍び寄り、時には妖艶な魅力で惑わせ、一瞬の隙を突いて鋭く刃を突き立てる。そのミステリアスな佇まいと洗練されたアクション性は、作品世界に独特の華やかさと緊張感をもたらす。
今回は、近年の実写化作品において圧倒的な存在感を示した女優に注目。彼女たちがいかにしてくノ一を体現したのか、三者三様のアプローチで魅せた「忍」の魅力を振り返っていく。
※本記事には各作品の内容を含みます
■“令和版くノ一”を体現した『アンダーニンジャ』白石麻衣
花沢健吾さん原作の実写映画『アンダーニンジャ』(2025年公開)で白石麻衣さんが演じたのは、金髪にメガネをかけた出版社の編集者・鈴木である。
彼女は小説家・吉田昭和(佐藤二朗さん)の担当として、彼の原稿を容赦なくバッサバッサとボツにして追い込む“鬼編集者”。そのコミカルでテンポの良い掛け合いは、登場直後から強烈なインパクトを残した。
しかし、それは表の顔に過ぎない。鈴木の正体は、忍者組織「NIN」に属する“現代くノ一”だったのだ。スマートフォンに任務の通知が届くと、冷徹な忍として、ただちに現場へ向かうのである。
作中の見せ場の1つが、忍者狩りをしている外国人と繰り広げる歩道橋でのバトルシーンだ。改造銃から放たれる弾丸を紙一重でかわしながら、ハイヒールに仕込まれたクナイや手裏剣、スタンガン付き警棒といった武器を駆使して戦う姿は圧巻。手すりの上を軽やかに駆け、的確に急所を突くそのアクションは、スピードと美しさが見事に融合した、まさに“令和版くノ一”と呼ぶにふさわしいだろう。
白石さんはインタビューにて「序盤は、鈴木のアクションから入るのですが、そのシーンは私もアクション部の方も納得いくまで撮りました。特に回し蹴りの場面は、一番いい画が撮れるまでやらせていただきました」と語っており、その言葉からはアクションシーンへの並々ならぬこだわり、そして自信がうかがえる。
本格的なアクションに挑むのは今回が初めてだったという白石さんだが、その堂々たる佇まいとキレ味鋭い動きで、見事にアクション女優としての新境地を切り開いたのである。
■愛らしい無邪気さは仮面だった…『あずみ2 Death or Love』栗山千明
小山ゆうさんの漫画『あずみ』を実写化した映画『あずみ2 Death or Love』(2005年公開)で栗山千明さんが演じたのが、“新人くノ一”のこずえだ。本作は、上戸彩さん演じる主人公・あずみが過酷な宿命に立ち向かう人気アクションシリーズの続編である。
こずえは、あずみとの同行を自ら志願する元気いっぱいの新人として登場する。赤い水玉模様の入った可愛らしい緑の着物から覗く太ももが初々しく、任務中にもかかわらずキャッキャッと無邪気にはしゃぐ姿が愛らしい。
しかし、その裏の顔はまったく異なる。彼女の正体は、幼い頃から伊賀に潜入していた甲賀の間者であったのである。こずえの愛らしい無邪気さはすべて仮面を被った姿であり、その内側には冷徹な本性を潜ませていた。
物語中盤、ついにこずえはその本性を現す。前作からの唯一の生き残りであり、あずみと共に育った仲間・ながら(石垣佑磨さん)をだまし討ちにし、弓矢で冷酷に殺害。その後、あずみに向かって「ながらを殺した」と不敵な笑みを浮かべて告げるシーンは、本作屈指の衝撃シーンだ。
ながらを演じた石垣さんは栗山さんについて、「すごく目力がありました! 演技にも迫力があって、僕、本当に殺されると思いましたよ」と、のちのインタビューにて語っている。
無邪気な新人くノ一から冷徹な刺客へ。鮮烈な変貌を見事に演じきった栗山さんの存在は、『あずみ2』という作品に強烈なインパクトを刻み込んだ。


