■ある意味、里一番の“クセ者”!? 「鉄地河原鉄珍」

 最後に、里の長である鉄地河原鉄珍を紹介しよう。

 小柄な鉄珍は、ニョキッと口の部分が伸びた特徴的なひょっとこ面をつけた白髪の男性で、一見すると穏やかな印象だ。しかし、刀に関しては厳しく、炭治郎の刀が折れた件についても、「折れるような鈍(ナマクラ)を作ったあの子が悪いのや」と、鋼鐵塚の未熟さを指摘している。

 鉄珍は鬼殺隊の中でも極めて特殊な日輪刀を使う恋柱・甘露寺蜜璃を担当する刀鍛冶で、その腕は里一番と言われている。里が鬼の襲撃を受けた際には、刀鍛冶たちが命がけで彼を守ろうと奮闘するほど、里の住人たちから深く敬愛される存在だ。

 その一方で、初対面の炭治郎に「里で一番小さくって一番えらいのワシ」「まあ畳におでこつくくらいに頭下げたってや」と冗談を言ったり、鬼に襲われていたところを甘露寺に助けられた際には「若くて可愛い娘に抱きしめられて何だかんだで幸せ…」と言い残して吐血したりと、お茶目な一面も持ち合わせている。

 まだ2歳だった鋼鐵塚を、育児ノイローゼになってしまった親に代わって育て上げ、「蛍」と名付けたのも鉄珍である。彼は鋼鐵塚にとって師であり、育ての親でもある。普段の好々爺然とした人柄の奥には、鋼鐵塚に引けをとらない刀鍛冶としての熱い誇りを秘めているのだろう。

 里一番の実力者でありながら、若い女性に目がないという人間らしさも併せ持つ鉄珍。ある意味、里一番の“クセ者”は彼なのかもしれない。

 

 『鬼滅の刃』に登場する刀鍛冶たちは、一様に日輪刀に対して並々ならぬ熱い思いを抱いている。命をかけて刀を研ごうとする鋼鐵塚だけでなく、ほかの刀鍛冶たちも、鬼に襲われながらも皆が自らの命を賭して日輪刀を守り抜こうとしていた。

 それは、鬼殺隊にとって日輪刀がどれほど貴重で重要な存在であるかを物語っている。唯一無二の武器を人力で生み出す高い技術を持つ刀鍛冶たち。一癖も二癖もある彼らの活躍もまた、『鬼滅の刃』の見どころの1つと言えるだろう。

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