吾峠呼世晴氏の漫画『鬼滅の刃』は、人を喰らう鬼と、それに立ち向かう人間たちの死闘を描いた物語だ。人間たちは鬼の強大な力に対し、「日輪刀」と呼ばれる特殊な刀と、独自の呼吸法を使用して戦いを挑む。
鬼殺隊にとって命綱ともいえる重要な武器であるこの日輪刀を製造しているのが、作中に登場する「刀鍛冶の里」である。謎に包まれたこの里には個性豊かな面々が揃っており、中にはその強烈なインパクトから、メインキャラクター以上に強い印象を残す者もいるほどだ。
そこで今回は、『鬼滅の刃』に登場する「刀鍛冶の里」の住人の中から、特に“アクが強すぎる”と評される重要人物たちを一挙にご紹介しよう。
※本記事には作品の内容を含みます
■まさに奇人!? 強すぎる個性に炭治郎もタジタジ…「鋼鐵塚蛍」
主人公・竈門炭治郎の日輪刀を手がけているのが、刀鍛冶の鋼鐵塚蛍だ。ひょっとこ面で顔を隠し、頭にかぶった笠からはいくつも風鈴をぶら下げた、なんとも個性的なスタイルで登場する。
初登場から炭治郎の話に耳を貸さず、家の玄関先でいきなり刀を取り出して矢継ぎ早に語り続けるなど、その奇行ぶりは相当だった。付き合いの長い鱗滝左近次ですら「相変わらず人の話を聞かん男だな」と呆れるほどだった。
炭治郎が初めて日輪刀を手にし、刀身が漆黒に染まった際には、鮮やかな赤い赫刀が見られると期待していただけに激しく憤怒。炭治郎の頬をつねって暴れ、アニメ版では奇声をあげて炭治郎に飛びかかり、関節技をお見舞いするという暴挙に出ている。
その後も炭治郎が下弦の伍・累との戦いで日輪刀を折ってしまった時は、包丁を持って追いかけ回し、さらに上弦の参・猗窩座との戦いで日輪刀を紛失した時は、頭と両手に2本ずつ包丁を装備。「刀を失くすとはどういう料簡だ貴様ァアアアア!!」「万死に値する…万死に値するゥ!!!」と恨み言を吐きながら、夜明け近くまで炭治郎を追いかけ回していた。
「遊郭編」では上弦の陸の堕姫・妓夫太郎との激闘で刀を刃こぼれさせてしまった炭治郎。蝶屋敷で療養する彼の元へ届いたのは、「お前にやる刀は無い」「ゆるさないゆるさない呪う」と書き殴られた、呪詛のような手紙であった。
だが、こうした常軌を逸した行動の数々は、鋼鐵塚の刀に対する人一倍強い愛情と情熱ゆえのものである。そんな彼の熱意を特に感じたのが、「刀鍛冶の里編」でのことだった。
里に伝わる戦闘訓練用絡繰人形“縁壱零式”から現れた錆びた刀を見つけるや、「俺に任せろ」と言って奪い取り、3日3晩かけて刀を磨くため、小屋にこもった。その最中、上弦の伍・玉壺の襲撃を受けるが、体中を切り刻まれても微動だにせず、刀を研ぐ手を止めることはなかったのだ。
もともと人付き合いが極端に苦手で、鬼殺隊士から担当を外されてばかりだった鋼鐵塚が、炭治郎とは強固な絆を築いていくのも印象的だった。
里が襲撃された後、療養中の炭治郎の元へ刀を届けに来た鋼鐵塚は「お前は今後死ぬまで俺にみたらし団子(※鋼鐵塚の好物)を持ってくるんだ」と吐き捨てていく。これは、彼なりの不器用な表現であり、炭治郎の無事を祈る気持ちが込められているようにも解釈できる。
炭治郎の命を守るため、決して折れない刀を作ろうと命をかけて刀を研磨した鋼鐵塚。奇行ばかりが目立つアクの強い彼だが、実は誰よりも剣士たちの無事を祈る優しい刀鍛冶なのだろう。
■毒舌の10歳…炭治郎を我流のスパルタ指導で鍛えた「小鉄」
「刀鍛冶の里編」に登場する小鉄もまた、印象深いキャラクターの1人だ。彼は、前述した戦闘訓練用絡繰人形“縁壱零式”の整備を担当する10歳の少年で、眉毛がつり上がったデザインのひょっとこ面を被っている。
縁壱零式を破損した霞柱・時透無一郎に憤怒した小鉄は、炭治郎に対し「これで修行して あの澄ました顔の糞ガキよりも絶対に強くなってくださいね……!!」「全力で協力 しますので…!!」と炭治郎を焚きつけ、特訓を開始。
腕が6本ある縁壱零式の動きに苦戦する炭治郎に“強くなってください”と激励する一方、無一郎に対しては「髪長すぎなんだよ 切れ昆布頭」「チビ」「不細工の短足」「切腹しろ 恥知らず」と、よどみなく罵詈雑言を吐き捨てる毒舌ぶりも披露していた。
炭治郎の弱点を的確に見抜くなど10歳とは思えないほど高い分析力を持つ小鉄だが、一方、指導者として素人の彼が行う訓練はスパルタそのものだった。
“指摘したことができなければ食事はなし”という過酷なルールのもと、炭治郎は飲まず食わずの訓練の果てに、三途の川の幻覚を見てしまうほどまでに追い詰められてしまう。しかし、この極限状態がきっかけとなり、炭治郎は「動作予知能力」を開花。結果的に戦闘技術も飛躍的に向上させた。
7日ぶりに食事にありつくことができた炭治郎。小鉄について分析力を高く評価したうえで、「剣術の教え手としてはド素人」「どのくらいが人間の命の限界かご存じない」「無知故の純粋なる暴挙!!」と語っている。
わずか10歳にして、戦闘の本質を見抜く鋭い分析力がある小鉄。子どもと言えど、鬼と戦うための武器を作る里の住人として一切の妥協を許さないその姿勢は、さすがと言わざるをえない。


