漫画に登場するキャラクターといえば、現実離れした個性的なビジュアルが特徴だ。二次元ならではの奇抜な髪型を持つ者も多く、キャラクターのアイデンティティを象徴する重要な要素でもある。
そのため、漫画原作の実写作品では、この独創的な髪型をいかに再現するかという点に制作陣も苦心することだろう。多くの場合、ウィッグなどを用いて再現されるが、なかには、自身の髪……すなわち「地毛」をそのまま活用し、とんでもない髪型を完璧に再現してしまった俳優たちも存在する。
今回は、並外れた役者魂で地毛での完全再現を成し遂げた俳優たちと、その驚愕のヘアスタイルについて見ていこう。
※本記事には各作品の内容を含みます
■ブリーチで皮膚が脱皮…!? 『ジョジョの奇妙な冒険』新田真剣佑
ホラーやサスペンスのテイストを取り入れたデザインセンスや、特殊能力を駆使した頭脳戦など、独自の世界観によって読者を魅了し続けている荒木飛呂彦さんの『ジョジョの奇妙な冒険』。
その人気から、アニメ化などさまざまなメディア展開がされており、2017年には実写映画『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章』が後悔された。本作は、日本の都市を舞台とした第4部の物語をベースに、多くの人気キャラクターを豪華俳優陣が演じたことでも話題となった。
なかでも、主人公の前に立ちはだかる敵、虹村億泰を演じた新田真剣佑さんは、地毛を大胆にアレンジすることでキャラクターの髪型を見事に再現している。
億泰の髪型は、頭頂部にパンチパーマを当て、サイドは白に近い色まで脱色した、不良然としつつもどこかおしゃれな髪型が特徴だ。
新田さんはこの独特な色のコントラストを再現するため、地毛に強烈なブリーチを施した。脱色剤の刺激はかなり強かったようで、皮膚がダメージを受け、“脱皮する”といった弊害もあったようだ。
髪型の再現率もさることながら、撮影期間中は徹底的に億泰になりきるため、オフの時間もほぼ同様のスタイルで生活をしていたというから驚きである。
もちろん、役作りのためのトレーニングも徹底。鍛え上げられた肉体と、地毛を用いたヘアスタイル、そして今にも相手に噛みつきそうなほどの凶暴な表情で、原作通りの億泰を完全に体現していた。
原作でも人気の高いキャラクターであるが、その再現度は多くの原作ファンを唸らせるほどの見事な出来栄えとなった。
■髪がプラスチックの硬度に…!?『今日から俺は!!』伊藤健太郎
西森博之さんが手掛ける大人気ヤンキー漫画『今日から俺は!!』は、千葉のとある私立高校を舞台に、個性豊かなツッパリたちが繰り広げる笑いあり、シリアスありの群像劇だ。
2018年に実写版テレビドラマ化された本作で最も特徴的な髪型のキャラクターといえば、やはり主人公の1人であるツッパリ・伊藤真司だろう。
彼の髪型は、長い髪を鋭い棘のように逆立てており、天高くそびえ立つそのシルエットは一度見たら忘れられない凄まじいインパクトを誇る。まさに本作の象徴ともいえるこの髪型を、彼を演じることとなった伊藤健太郎さんは、自身の地毛を駆使して再現してみせた。
その方法は、大量の整髪液を髪に塗り込み、コテによって毛を立たせ、根元を大量のピンで固定するというシンプルながら手間がかかるものであった。
髪の毛1本1本がスタイリング剤でコーティングされているため、出来上がりはかなりの硬度を誇り、その触感はまるでプラスチックのようであったという。
ヘアメイクスタッフが熟練の腕で仕上げたというが、それでもこの髪型が完成するまでには40〜50分もかかるというのだから驚いてしまう。伊藤さん本人も、ピンで髪を止めるときに痛みを伴ったり、整髪剤が汗によって流れ落ちて結果的に肌を傷めてしまうなど、相当苦労する部分があったようだ。
だが、その苦労の甲斐あって、髪型としての完成度、原作再現度は圧倒的。見た目のインパクトは言うまでもなく、激しいアクションにも耐えうる頑強なヘアスタイルを実現することができた。
原作ファンたちも、まさかこのトゲトゲな髪型を地毛で作り上げてしまうとは、予想だにしなかったのではないだろうか。


