■息子のために奔走する「サンタのプレゼントが楽しみだゾ」
「サンタのプレゼントが楽しみだゾ」は、子どもへの愛情に溢れたひろしの姿を見ることができるエピソードだ。
クリスマスの夜、ひろしとみさえはしんのすけの妹・ひまわりにはプレゼントを用意していたが、手違いでしんのすけの分を用意していなかった。
ひろしは慌ててしんのすけへのプレゼントを買いに行くものの、玩具店は閉まっており、手ぶらで帰ってくる。しかし、そこでしんのすけが口にしたのが、“サンタさん、ひまわりへのプレゼント忘れてないかなあ”という妹を気遣う言葉だった。
それを聞いたひろしは心を打たれ、再びしんのすけのプレゼントを求めて雪の降る夜の街へと駆け出していくのである。
雪が降り積もる寒さの中、しんのすけのプレゼントのために夜の街を駆け回るひろし。世の中の“サンタクロース”たちの苦労と愛情を代弁するような、心温まるエピソードだ。
■家族のために禁煙を決意「父ちゃんもがんばってるゾ」
最後に紹介するのは、愛煙家であったひろしが禁煙に挑むエピソード「父ちゃんもがんばってるゾ」だ。これは、みさえが第2子であるひまわりを妊娠していた頃の話である。
当時のひろしは、家でも会社でもタバコを吸っていた。ある日、みさえが作る朝食やお弁当に対し、些細な文句を言って出勤したひろし。
だが、会社でみさえが作ってくれたランチバスケットを開けると、そこには「いつもごくろうさま! 身体に気をつけてお仕事がんばって下さい」というみさえからの手紙、そして、「しゅっせしろよ」というしんのすけの手紙が添えられていた。
その後、仕事が終わり、駅でみさえとしんのすけに出迎えられたひろしは、家族の幸せを再認識する。彼はみさえに今朝の出来事を謝り、その後、胸ポケットに入っていたタバコをこっそりゴミ箱に捨て、家族のために禁煙することを固く決意するのであった。
現在のアニメでは喫煙シーン自体が少なくなっているが、このエピソードが放送された96年当時はまだ愛煙家が多かった時代である。そんな中、家族のため、強い気持ちでタバコを辞める決断をしたひろしは、まさしく良き父、良き夫だと言えるだろう。
今回紹介したひろしの行動は、いずれも世界を救うような派手な活躍ではないだろう。しかし、妻の失敗を大きな愛で許し、子どもの純粋な夢を守り、家族の健康のために自分を律するような姿は、多くの人が理想とする父親像と重なるのではないだろうか。
たびたび「理想の父親」と称賛されるひろしだが、そう呼ばれる理由は、映画のような非日常のピンチだけでなく、こうした日常のふとした瞬間に見せる深い家族愛にあるのだろう。


