■ロボットと人間の軋轢に苦悩する孤独なヒーロー…『ロボット刑事』
次に紹介する特撮刑事作品は、1973年(昭和48年)からフジテレビ系で放送された東映製作の『ロボット刑事』だ。
同作は、『仮面ライダー』シリーズやスーパー戦隊シリーズの元祖『ゴレンジャー』など、多くの東映特撮作品の原作を担った石森章太郎(石ノ森章太郎)氏が携わり、1970年代の変身ヒーローブーム期に誕生した「変身しないロボットヒーロー」だ。
主人公は、警視庁に配属された犯罪捜査用ロボット刑事「K」。高度な知能を有するKは、ロボットによる犯罪組織「バドー」と戦うため、警視庁のベテラン刑事・芝大造の相棒となり、事件を解決に導く。
なお、水木一郎氏が歌う主題歌の『ロボット刑事』は「K」を強調する歌詞が印象的で、筆者は長らく番組タイトルを『ロボット刑事K』だと勘違いしていた。
普段のKは、赤いブレザーに白いスラックス、黄色のハンチング帽という昭和の古典的な刑事スタイル。戦闘時はそれらを脱ぎ捨ててロボットの体をあらわにして戦う。実は、通常時のKにはリミッターがかかっており、服を脱ぐことで5倍のパワーが出せるのである。
そんなロボット刑事Kの声は、『あしたのジョー』の力石徹や『宇宙戦艦ヤマト』の島大介など、落ち着いたバリトンボイスが魅力の声優・仲村秀生氏が担当した。
Kの体にはあらゆる科学捜査のメカニズムが組み込まれ、人間の思考を理解できるほど優秀なロボットだったが、相棒の芝は交通事故で妻を亡くしたことをきっかけに機械を毛嫌いするように。
また叩き上げのベテラン刑事である芝は、常に理論的かつ科学的なKの捜査手法に否定的で、当初はKに対して「鉄くずロボット」などと散々な言いようだった。しかし、Kのことを信頼する後輩刑事・新條強を介して、次第に芝のKに対する態度も軟化していく。
あれだけ頑なだった芝の心が少しずつ溶け出し、次第にKを頼りにするようになっていく過程は、見ていて心が温まる展開だった。
一方で同作では、犯人が自分と同じロボットであることへのKの苦悩、人間との軋轢、傷つきながらも戦い続けるKの孤独が赤裸々に描かれ、子ども心につらい部分もあった。
ロボットの悲哀を描き出す重厚な人間ドラマは、とても子ども向け作品とは思えないほど。今の特撮作品とは違ってド派手なヒーロー的な武装を持っているわけではなく、ロボット破壊銃がある程度である。そんなリアル志向の『ロボット刑事』は、普通の刑事ドラマにも引けを取らないストーリー展開が魅力でもあった。
ちなみに、本作はJAC(ジャパンアクションクラブ)が初の単独アクションを担当した作品であり、その縁で第1話と第2話にはJAC創始者の千葉真一氏がゲスト出演している。


