■吹雪の雪山を走り切る…体力と精神力の証明『テセウスの船』
最後に、ドラマ『テセウスの船』(2020年放送)から。竹内さんが演じた主人公・田村心は、父親が起こしたとされる殺人事件の真相を追う中で過去へタイムスリップし、家族の未来を救おうと奔走する役どころだ。
本作は派手な格闘シーンこそ少ないものの、極限状況においてのアクションが光る。
象徴的だったのが第1話のラスト、崖で父・佐野文吾(鈴木亮平さん)を救出するシーンだ。それまで父を信じきれずにいた心が、父は無実だと確信する転機となるこのシーンは、物語全体の核となる重要なポイントだ。
このシーンは、緑山スタジオに約5メートルの崖セットを組んで撮影され、父を引き上げる動作はワイヤー補助を最小限に、ほぼ竹内さん自身の腕力で演じられたという。
また第6話では、前半戦のクライマックスとして、真犯人と直接向き合う緊迫のシーンが登場する。命を奪おうとする犯人と、必死に抵抗する心がぶつかり合う、張り詰めた対決となった。
本作の舞台となる北海道・音臼村を再現する雪山でのロケは、暖冬の影響でロケ地の変更を余儀なくされた結果、雪量が多く天候も不安定な中での撮影となったという。
現代からタイムスリップした心は、雪山でもスニーカーで走らなければならず、足元を取られて思うように前へ進めなかったという。竹内さんはこの雪山ロケを振り返り、“肉体的に一番辛かった”と語っている。
本作はアクションシーンだけでなく、雪山という極限の撮影環境の中、倒れず走り続ける姿を通して、竹内さんの並外れた体力と強い精神力が伝わってくる一作である。
今回紹介した3作品を振り返ると、竹内涼真さんのアクションには、派手さや演出の加工に頼らない、生身の体でぶつかり合うからこそ生まれる“本物の説得力”があることが分かる。危険を承知で自らの体で表現するその覚悟こそが、映像に圧倒的なリアリティを宿しているのだ。
現在放送中の『じゃあ、あんたが作ってみろよ』では、まったく異なる恋愛模様を演じており、新境地を見せている竹内さん。だがその一方で、一流のアクションもこなすことができる。作品ごとにまったく異なる“全力の顔”を見せる竹内さんの表現力の幅広さには、改めて驚かされてしまう。
次はいったいどんな役に挑むのだろうか。きっとまた、我々の想像を超える姿を見せてくれるに違いない。


