吾峠呼世晴氏の初連載作として連載が開始された漫画『鬼滅の刃』は、2016年から2020年にかけて『週刊少年ジャンプ』(集英社)で連載された作品だ。2019年のアニメ化をきっかけにその人気に火がつき、原作完結から5年が経過した今でも多くのファンを魅了し続けている。
そんな本作の物語は、主人公の竈門炭治郎が鬼によって家族を惨殺されるという衝撃的な出来事から始まった。そして物語が進むにつれて、なぜ「竈門家」が狙われたか、その真相も少しずつ明かされていった。
そこで今回は、公式情報をもとに竈門家襲撃の真相を深掘りしていこう。
※本記事には作品の核心部分の内容を含みます
■竈門家を襲撃したのは鬼の始祖・鬼舞辻無惨
物語の全ての始まりとなるのが、竈門家への襲撃である。山奥の一軒家で炭焼きを営む竈門家は、大黒柱である父・炭十郎を病で亡くし、長男の炭治郎が母・葵枝や妹の禰󠄀豆子、そして幼い弟妹たちを支え、慎ましくも幸せに生活していた。
しかし、ある雪の日、炭治郎が町へ1人で炭を売りに行ったことが一家の運命を分ける。町での用事が長引いて帰りが遅くなり、麓の家で一晩泊まらせてもらった炭治郎。翌朝帰路につくと、家に近づくにつれて血の匂いが漂ってきた。そして玄関先で、末の弟・六太を庇うように倒れている禰󠄀豆子を発見する。
家の中には、すでに息絶えた家族の姿があった。壊れた家具と飛び散った血の跡から、凄惨な出来事があったことが一目で分かる状況だった。当初、炭治郎は「熊か? 冬眠できなかった熊が出たのか?」と、獣の仕業を疑っていたほどだ。
しかし、人並み外れて嗅覚が優れている炭治郎は、この時、現場で“ある匂い”を嗅ぎつけていた。鬼と化した禰󠄀豆子を倒しに現れた鬼殺隊・水柱の冨岡義勇に対し、「俺の家にはもう一つ 嗅いだことのない誰かの匂いがした」「みんなを殺し…たのは多分そいつだ」と証言している。
炭治郎の必死の説得と、鬼化したにもかかわらず兄を庇う禰󠄀豆子の特異な行動を見て、2人を見逃すことを決めた義勇。こうして炭治郎は鬼殺隊士として、鬼と戦う道へ足を踏み入れることになるのである。
その後、炭治郎は浅草の喧騒の中、家に残されていた匂いの主と遭遇している。その人物こそが、鬼の始祖・鬼舞辻無惨だった。無惨は「月彦」と名乗って人間のふりをし、人間の妻・娘と家庭を築いていた。
1000年にも渡る鬼殺隊の歴史の中で、無惨本人に遭遇したのは炭治郎が初めてだった。それほどまでに用心深く決して尻尾を掴ませなかった無惨が、なぜ自ら、竈門家を襲撃したのか。この事実に多くの読者が驚いたのではないだろうか。
■山奥の一軒家にわざわざ…無惨はなぜ竈門家を狙ったのか?
ではなぜ、無惨は危険を冒してまで竈門家を狙ったのだろうか。その謎を解き明かす鍵が、『鬼滅の刃 公式ファンブック 鬼殺隊見聞録・弐』にて描かれている。
実は、炭治郎の母・葵枝は、「青い彼岸花」が咲く場所を知っていたという。この青い彼岸花とは、鬼が日の光を克服するための薬の材料になるとされ、かつて無惨を鬼にした平安時代の主治医だけがその在処を知っていたと言われる幻の花だ。だが、自らの手でその主治医を殺してしまった無惨。以来、長きにわたって青い彼岸花を探し求めることとなる。
年に数日、咲く時間も昼間のわずかな時間しか咲かないこの青い彼岸花を、葵枝は炭治郎に見せたことがあった。そして、これを見たのは6人兄弟の中で炭治郎だけだったという。
葵枝が場所を知り、幼い頃に炭治郎も見たことがあるという事実から、青い彼岸花は竈門家の住む場所からそう遠くはない場所に咲いていたと推測される。
無惨はかつての主治医が住んでいた場所の手がかりをもとに、青い彼岸花を血眼で探していた。炭治郎の出身地は「東京府奥多摩郡雲取山」と明かされているので、探す過程で偶然にも竈門家の近くにたどり着いたのだろう。
いくつかの不運が重なった結果、竈門家は無惨の標的となってしまった可能性がある。幼くして亡くなった弟妹たち、そして子どもたちを守れなかった母・葵枝のことを思うと、胸が痛む。青い彼岸花さえなかったら、一家の運命は変わっていたかもしれない。


