漫画やアニメを原作とした実写化映画では、キャラクターの再現度が作品の評価を大きく左右するといっても過言ではない。原作ファンはもちろん、新たに作品に触れる視聴者にとっても、そのキャラクターがいかに“原作そのまま”であるかは、物語へ没入できるかどうかを決める重要なポイントだ。
実写化作品が次々と生み出される中、原作へのリスペクトを胸に、細部までこだわってキャラクターに命を吹き込む女優たちがいる。特に外見などに強い個性を持つキャラクターを演じた際に視聴者にもたらされる衝撃は大きく、時を経てハマり役として語り継がれることも少なくない。
そこで今回は、数ある実写化映画の中でも圧倒的な完成度で視聴者を魅了した女性キャラクターたちを5回にわたってピックアップし、その再現力の高さを振り返っていく。
【第5回/全5回】
■セクシーな魅力が大爆発!佐藤江梨子さんのキューティーハニー
2004年に公開された『キューティーハニー』は、永井豪さんとダイナミックプロによるメディアミックス作品を実写化した映画である。監督を務めたのは、『新世紀エヴァンゲリオン』の庵野秀明さん。独特の画角と個性的なストーリーで話題を呼んだ1998年公開の『ラブ&ポップ』とは打って変わって、本作は分かりやすいアクション作品となっている。
本作の最大の特徴は、“ハニメーション”と呼ばれる映像手法を用いている点だ。これはタイトルにちなんで生まれた造語で、作成した絵コンテごとに俳優がポーズを取ってコマ撮りし、その映像をつなぎ合わせて作るという手法。簡単に言えば、実写とアニメの融合であり、アニメ的な映像表現の再現を目指した庵野監督らしい試みと言える。
物語は、如月博士によって生み出されたアンドロイド・如月ハニーが、科学者・宇津木博士の誘拐をきっかけに、秘密結社パンサークローと戦うというもの。原作を踏襲しつつも、ハニーが学生から派遣OLになっているなど一部設定に違いがある。
そんな実写版『キューティーハニー』でハニーを演じたのが佐藤江梨子さんだ。当時22歳の彼女は抜群のスタイルと明るいキャラクターで人気を集めており、本作でのハニー役抜擢は女優として新たな一歩を踏み出すきっかけとなった。
ハニーといえば、様々な人物に変身できる能力が特徴だ。1973年に放送されたアニメでも、服が破れていく過激な変身シーンが話題を呼んだが、とりわけバトルに特化した究極戦士のキューティーハニーは、胸元の開いたボディラインを強調するスーツが印象的で、多くの視聴者の目を釘づけにした。
佐藤さんはその恵まれたプロポーションを生かし、このハニーの衣装を見事に再現している。レオタード風のコスチュームは、より現代的でスタイリッシュなデザインへと進化。胸元はセクシーさを強調するかのように大きくハート型にカットされ、頬にはハートマークが浮かぶ。ピンクの髪や派手なコスチュームは実写だと浮いてしまいがちだが、佐藤さんが身にまとうと自然に映り見事にハマっていた。それはひとえに、彼女のスタイルのよさがあってこそだろう。
劇中では、バスタオル姿や浴衣姿、カウガール風、超ミニスカートにチャイナドレスなど多彩な衣装で登場し、様々な表情を見せる佐藤さん。セクシーさだけでなく明るくてちょっと抜けているハニーの内面的な魅力も表現しており、まさに“変身ヒロイン”の名にふさわしい存在感を放っていた。衣装は20着ほど着替えたそうで、その話からも撮影がかなり大変だったことがうかがえる。
ちなみに、「じゃ!」という実写版オリジナルの決めポーズは佐藤さんのアドリブを庵野監督が気に入って生まれたものなのだとか。刺激的なシーンについても恥ずかしがっていたら務まらないと語っており、楽しみながら役に向き合ったことで生まれた名キャラだったようだ。
アニメの世界を現実に引き込んだ庵野監督の挑戦と、佐藤江梨子さんの大胆でキュートな演技とプロポーションが見事にかみ合った本作。実写版ならではの魅力とポップなテンションが詰まったキューティーハニーになっていたと言えるだろう。


