■殺人をもいとわない“修羅”たち

 まず第5位は、不破圓明流伝承者・不破北斗。陸奥圓明流と対をなす“闇の圓明流”の継承者にして、九十九と宿命的な死合を演じた男だ。技術・反応速度ともに九十九とほぼ互角で、九十九を圧倒する場面も多く、奥義「神威」の後に頭を踏み潰していれば勝っていたと思われるほどだった。

 しかし北斗は冷酷に見えて詰めが甘く、勝利目前で手を止めてしまった。その一点が、彼を5位にとどめた理由だ。とはいえ九十九の祖父である陸奥真玄が「やり合いたくない」と評したほどの存在であり、純粋な戦闘力ではもっと上位といえるかもしれない。だが“殺しきれなかった”という事実が、修羅の世界では決定的な差となる。

 第4位には、ブラジルの天才柔術家レオン・グラシエーロが入る。かつて無敗の王者としてヴァーリ・トゥードを制し、現役復帰後も九十九を極限まで追い詰めた。九十九に「四門」を使わせた数少ない相手であり、彼に「あんたが怖い…臓(はらわた)が震える程に…」と思わせるほどの死闘を演じた。

 しかし、九十九が後に「修羅王」として覚醒する以前の対戦相手であることから、わずかに順位を下げた。

 第3位は、呂家最強の暗殺拳士・姜子牙(ジャン・ズ・ヤ)こと高長恭(ガオ・チャン・ゴン)。台湾の暗殺一族・呂家を統べる男にして、“神の子”を自称する存在だ。九十九との「THE APEX」決勝戦では、暗器すら駆使して命を懸けた死闘を展開した。

 「四門・青龍」を発動した九十九に敗れるが、戦いの中で九十九がケンシン・マエダ戦の記憶を取り戻す契機ともなった。人を殺めることを厭わず、あらゆる武を暗殺術に昇華した呂家拳法の完成形として、殺意を含めた“修羅の強さ”ではトップクラスだ。

 第2位は、伝説の格闘家ケンシン・マエダ(前田光世)。九十九が南米ジャングルへと旅立ち、消息を絶つ原因となった宿命の相手だ。

 九十九は当初彼との死闘の記憶を失っていたが、後に思い出されるその戦いは凄絶の一言。チョークスリーパーで九十九を絞め落とす寸前まで追い詰め、最後に白虎の門を開かなければ九十九の敗北は濃厚だっただろう。圓明流の使い手以外では、最も九十九を追い詰めた格闘家といえる。

■第1位は九十九が認めた男

 第1位は、誰もが納得するであろう神武館の海堂晃(かいどうあきら)。九十九自身が「今までオレが逢った化物の中で最も強い」と語った唯一の男だ。

 龍造寺徹心が理想とした“空”の極致──すべてを受け流し、最小の動きで最大の反撃を叩き込む「空王」の境地に到達した海堂は、まさに人間の枠を超えた存在だった。九十九が「四門」を発動してもなお倒れず、最終的に曲芸的な“ひっかけ蹴り”という意外な一撃でかろうじて敗れた。九十九が全力を尽くしても及ばなかったという点で、作中における最強は間違いなく彼である。 

 なお、ここで挙げたランキングは“九十九を除く”ことを、再び明記しておきたい。陸奥九十九は修羅の血と不破の血を併せ持つ「修羅王」であり、作中では彼を超える者はいない。したがって本ランキングは、あくまで“九十九を最も追い詰めた者たち”の序列である。

 

 『修羅の門』の魅力は、単なる技の強弱ではなく、戦士としての覚悟と“修羅”の境地そのものにある。海堂の「空」、北斗の「闇」、ケンシンの「魂」、姜子牙の「殺意」──それぞれが異なる「最強」の形を体現していた。九十九はそうした強者たちとの戦いを通じ、さらなる高みへと至ったのである。

 作中最強は間違いなく陸奥九十九。しかし、彼を苦しめ、成長させた者たちがいたからこそ、『修羅の門』という作品は今もなお伝説として語り継がれているのだ。

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