■まさかの犯人による“変装”

 ここまではおなじみの協力者たちの変装だったが、なんと新一の姿になって罪を犯した犯人もいる。そんな驚きの事件が描かれたのが、コミックス62巻にある「殺人犯、工藤新一/新一の正体に蘭の涙」だ。

 物語は、新一が1年前に推理ミスを犯したとされる村を、コナン、毛利小五郎、蘭、服部、和葉が訪れたところから始まる。その調査の最中にコナンが姿を消し、時を同じくして記憶喪失の新一が発見された。服部や蘭がその様子に違和感を覚える中、殺人事件が起こってしまう。

 新聞記者の女性が何者かに刃物で刺され、状況証拠は新一が犯人だと示していた。しかし服部は、新一が殺人を犯すはずがないと信じ、真相究明に乗り出す。

 そして調査の末、記憶喪失の新一の正体が明らかになる。その正体は、1年前の新一の推理ミスに恨みを抱く人物。彼は復讐のため、わざわざ整形をして新一と同じ顔になっていたのである。

 犯人は新一を社会的に抹殺しようと企てたが、その計画は本物の新一と服部によって見抜かれてしまう。おまけに、1年前の事件でも新一は推理ミスなどしておらず、犯人の一方的な逆恨みだったことも判明した。

 協力者が変装するのはおなじみだが、犯人が整形手術までして新一になりすましたのは、この事件が最初で最後だろう。犯人の新一に対する強い憎悪が描かれ、普段は人望が厚い新一が恨まれるというレア回でもあった。

 

 作中では「偽新一」がしばしば登場する一方、コナン自身が一時的に元の姿に戻るエピソードも意外と多い。服部との最初の出会いで戻ったのを含め、原作ではこれまでに5回、新一としての姿を取り戻している。

 蘭や新一自身のことを考えると、一時的でなく完全に元の姿に戻る日が来ることを願うばかりである。

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