2025年9月26日発売の雑誌『ビッグコミックスペリオール』(小学館)にて、約13年の連載に幕を下ろした太田垣康男氏の人気漫画『機動戦士ガンダム サンダーボルト』。同日は『スペリオール』が売り切れる店が出るほど、大きな反響を呼んだ。
『サンダーボルト』は、テレビアニメ『機動戦士ガンダム』の最終局面から続くパラレル作品として描かれているが、その人気の理由のひとつとして、同作から生まれた多彩なモビルスーツ(MS)たちの存在が挙げられるだろう。
ガンダムファンにとってはおなじみの機体たちに、同作ならではのアレンジや独自設定が取り入れられてきた。
中にはファンを驚かせるほど奇抜なデザインの機体も登場。物語が完結した今、あらためて『サンダーボルト』らしいインパクトあふれる機体を紹介しつつ、奇想天外な設定などを振り返っていきたい。
※本記事には作品の内容を含みます。
■ジオン残党の指揮官が「軍神」と呼んだ象徴的なザク
まず、太田垣氏の『サンダーボルト』における奇抜なデザインのMSとして「サイコ・ザク」を思い浮かべる人は多いのではないだろうか。実際、劇中でもこのサイコ・ザクを巡るストーリーが展開された。
このサイコ・ザクの正式名称は「リユース・P(サイコ)・デバイス装備 高機動型ザク」という。「リユース・サイコ・デバイス」という技術を用いた、特殊な操縦方法の具体的な内容が判明すると多くの読者に衝撃を与えた。
簡単にいえばパイロットの脳波を機体の動きに連動させ、人間が自分の手足を動かすかのように機体制御を行う技術である。
しかし機体とパイロットをつなぐには、パイロットの四肢が義肢化されている必要があり、左腕と両足を失っていたジオン軍の傷痍軍人ダリル・ローレンツは、サイコ・ザクに乗るために健常だった右腕まで切断することとなる。
そうまでして手に入れたサイコ・ザクの力は絶大で、もうひとりの主人公イオ・フレミングが乗るフルアーマーガンダムと激闘の末、相打ちに近いかたちとはいえ勝利をおさめた。
その後のストーリーでは、サイコ・ザクの量産を目論む反連邦組織「南洋同盟」に加わったダリルと、それを阻止しようとするペガサス級強襲揚陸艦「スパルタン」を母艦とするイオたち地球連邦軍との戦闘に突入。初代サイコ・ザクに見直しが加えられ、再設計された「サイコ・ザクMk-II」に搭乗したダリルは躍動することになる。
そこまで大幅に性能が向上したわけではなかったが、両手のヒート・ホーク2本のみでスパルタンをめった斬りにして撃沈させる姿は、ジオン残党の指揮官が「軍神」と呼ぶのも納得の強さだった。
■許しがたい偽装? 連邦の象徴が敵陣営に…!?
スパルタンとの戦いに勝利した南洋同盟は、サイコ・ザクの量産化に着手し、それを宇宙にあげて最終作戦の準備を進める。
さらなる力を求めるダリルは、かつて倒したフルアーマーガンダムの装甲およびスラスターなどを、自身のサイコ・ザクMk-IIに換装していく。
こうして完成したのが「パーフェクト・ガンダム」だ。劇中では「装甲強度200%増加」「推力150%上昇」「反応速度30%アップ」と、ただでさえ悪魔的な強さを誇ったサイコ・ザクがさらに強化されることとなった。
見た目は完全にガンダムだったが、中身はザクであるため、メインカメラの起動音はおなじみの「グポン」という擬音で表現されている。
パーフェクト・ガンダムは、その強さをいかんなく発揮し、ダリルは連邦軍の宇宙基地「ルナツー」を単騎で強襲。守備隊を圧倒し、連邦に鹵獲されていたニュータイプ専用モビルアーマー「ブラウ・ブロ」を奪還してみせた。
さらにブラウ・ブロまで外部ユニットにしてドッキングしたパーフェクト・ガンダムは、地球連邦軍の宇宙艦隊すら圧倒。ザクにガンダムの皮を被せ、ブラウ・ブロと合体させるという、アニメファンからすれば驚きの展開の連続が、『サンダーボルト』の魅力なのかもしれない。


