バトル漫画に欠かせない要素として、キャラクターたちが放つ多種多様な必殺技の存在が挙げられる。
ときにド派手に、ときに華麗に繰り出される必殺技のなかには、作品を読んだことがなくとも一度は耳にしたことがあるような、強烈なインパクトを持つものも少なくない。
“作品の顔”になっているような象徴的な必殺技の中には、実は絶大な知名度に反し、作中でたったの一度しか放たれていないものがあることをご存じだろうか。
有名でありながら意外とレアな、必殺技の数々について見ていこう。
※本記事には各作品の内容を含みます
■ケンシロウの代名詞は一度きり?『北斗の拳』北斗百裂拳
1980年代から90年代にかけての「ジャンプ黄金期」には数々の伝説的な作品が生まれたが、その先駆けともいえるのが、核戦争後の荒廃とした世界を舞台としたバトル漫画『北斗の拳』である。
原作:武論尊さん、作画:原哲夫さんのタッグが贈るバイオレンスアクション作品で、一子相伝の暗殺拳「北斗神拳」の伝承者である主人公・ケンシロウが、強敵たちと激闘を繰り広げていく物語だ。
作中ではさまざまな北斗神拳の技が繰り出されるが、なかでも絶大な知名度を誇るのが「北斗百裂拳」だろう。
これは記念すべき第1話にてジードを倒すために使用した技であり、「あたたたたーーっ!!」と独特の雄叫びを上げながら、無数の突きを相手に叩きこんでいく。
巨体を浮かせるほどの凄まじい連打と、全身の経絡秘孔を突くことで肉体を内部から破壊するその威力は、まさに必殺技と呼ぶにふさわしい破壊力を持つ。
ケンシロウを代表する必殺技……と思われがちだが、実は原作漫画の中で明確に「北斗百裂拳」として技名が叫ばれたのは、物語冒頭のこの1回のみ。
もちろん、ケンシロウは後にも同様の雄叫びとともに拳を連打する場面がたびたび登場する。その姿が「北斗百裂拳」に似ていることから、自然と彼の代名詞のような存在として認知されていったようだ。
ケンシロウが技中に放つ“怪鳥音”と呼ばれる独特の叫び声は、1984年から放送されたテレビアニメ版で声優の神谷明さんが熱演したことでも有名である。凄まじい勢いで拳を叩きこみながら甲高い雄叫びを上げるそのインパクト大な映像も、「北斗百裂拳」の知名度を不動のものにした大きな要因の一つなのかもしれない。
■かめはめ波との激突シーンは圧巻…『ドラゴンボール』ギャリック砲
『週刊少年ジャンプ』(集英社)が生み出した数々の名作バトル漫画のなかで、鳥山明さんの代表作である『ドラゴンボール』を忘れるわけにはいかない。連載終了後もさまざまなメディア展開が続いており、今もなお根強いファンを多く持つ名作となっている。
そんな本作には数々のド派手な技が登場するのだが、なかでも知名度とは裏腹に意外と出番が少なかった技と言えば、主人公・孫悟空の永遠のライバル・ベジータが放った「ギャリック砲」が挙げられる。
この技はベジータが作中、初めて名前を明かした技で、凝縮したエネルギーを相手目掛けて一気に放出する大技だ。悟空の代表技である「かめはめ波」にもよく似ており、作中では追い詰められたベジータが地球もろとも悟空を吹き飛ばすために放った。
「地球もろとも宇宙のチリになれーーーっ!!!!!」というインパクトあふれる台詞も相まって絶大な知名度を誇る技だが、実は原作漫画で放たれたのはこの悟空との対戦のみという、意外とレアな技だったりもするのだ。
悟空が放つ「かめはめ波」とベジータの「ギャリック砲」が真正面から激突する場面は、ページから伝わる迫力と緊迫感に、誰しもが手に汗を握ったことだろう。
なお、アニメや映画などではその後もたびたび登場していることもあり、メディアミックス作品を見たファンからはベジータの代表技として認知されることになったようである。


