1966年放送の『ウルトラQ』から始まる昭和『ウルトラマン』シリーズ。地球に襲来した怪獣や宇宙人とウルトラマンたちの壮絶なバトルは多くのファンを魅了したが、それと同時に進行する、人間ドラマも魅力のひとつだった。
そんな物語パートを彩った女性陣たちも印象深い。たとえば『ウルトラマン』には科学特捜隊のフジ・アキコ隊員が登場し、『ウルトラセブン』ではウルトラ警備隊の友里アンヌ隊員が人気を博した。
また、『帰ってきたウルトラマン』には郷秀樹(ウルトラマンジャック)の恋人として坂田アキが登場。『ウルトラマンA』では、北斗星司とともにウルトラマンAに変身する南夕子がヒロインとして活躍するなど、枚挙にいとまがない。
その一方で、敵陣営の中にも数多くの女性キャラが登場し、中には悲劇的な最期を迎えたケースも少なくない。今回はそんな敵側にいた女性キャラクターにスポットを当て、その悲劇的な背景とともに振り返っていこう。
※本記事には各作品の内容を含みます。
■自らの使命を捨てて散った「ケンタウルス星人」の悲哀
最初に紹介するのは1972年放送の『帰ってきたウルトラマン』第44話「星空に愛をこめて」に登場した「広田あかね」という女性だ。
あるとき、特殊組織「MAT」の郷秀樹と岸田文夫隊員が炎上する車からあかねを救出。これをきっかけに岸田隊員とあかねの交流が始まり、岸田隊員は結婚も視野に入れるようになる。
しかし、実はあかねの正体は、地球侵略を狙う宇宙牛人「ケンタウルス星人」で、MATが誇る超遠距離レーダーを破壊するために燐光怪獣「グラナダス」とともに地球へと飛来していた。
そしてグラナダスがレーダー基地付近に出現したとき、あかねは岸田に別れを告げ、「これを私だと思って」と自身のアクセサリーを手渡すのだった。
あかねは、敵対する異星人ながら岸田隊員を愛していた。一方で彼女が破壊の任務を担う高性能レーダーを設計・開発したのが岸田隊員だと知って、彼とこれ以上会うべきではないと考えての決断だった。
その後、自分の正体を見抜いた郷に対し、あかねは自身が抱える事情や岸田隊員への想いを明かす。そして再びグラナダスが出現したと聞くと、自ら戦いの場へ赴いた。
岸田隊員に正体を明かしたうえ、彼を愛していると告げると、彼女はケンタウルス星人の姿に変身。体内に仕掛けられた爆薬を作動させ、グラナダスとともに自爆するのだった。
「この地球で、初めて宇宙人の心に触れることができたんです」。戦いのあと、郷は岸田隊員をそう言って慰めている。だが、彼女との結婚を本気で考えていた岸田隊員や、彼を想って自爆を決行したあかねのことを思うと、胸が痛くなるエピソードだった。
■北斗星司に好意を抱き、仲間を裏切ったゆえの悲惨な最期
続いてピックアップするのは、1972年放送の『ウルトラマンA』第25話「ピラミッドは超獣の巣だ!」に登場したミチルという少女だ。
小学校に突如として謎のピラミッドが出現。そこにふらりと現れた謎の少女ミチルは、たまたま北斗星司と南夕子に出会う。二人が超獣攻撃隊TACの隊員だと分かると突然態度を変え、心配する北斗の話を聞こうともしなかった。
その後も北斗はミチルのことを何かと気にかけるが、そんな北斗の思いを裏切るように、ミチルはTACの新兵器「V9」の破壊を目論む。
実はミチルは、かつて地球を植民地化していた古代星人「オリオン星人」の工作員で、オリオン星人は長い冷凍睡眠から目覚めて再び地球の支配を画策。彼女はその尖兵として活動していたのだ。
しかし、ミチルはV9の破壊に失敗。さらに地球人に好意を抱きはじめていることを見透かされたミチルは仲間から見捨てられた。
そんな状態に置かれてもかたくなな態度を取りつづけるミチルに対し、北斗は平手打ち。これで目が覚めたのか、北斗の窮地に駆けつけたミチルは自らオリオン星人であることを明かし、「お願い北斗、許すって言って……」と懇願した。
だが、古代超獣「スフィンクス」が暴れたおかげで、ミチルはその答えを聞くことは叶わず。スフィンクスとの戦いでウルトラマンAがピンチに陥ったとき、ミチルは笛を吹いてスフィンクスの戦意を喪失させる。
この裏切り行為に激怒したオリオン星人は、ピラミッドからの攻撃でミチルを処刑した。
彼女が北斗に対して、どこまで真剣に想っていたのかは分からない。しかし、それまで心を固く閉ざしていたミチルが正体を明かし、北斗に許しを乞うときの表情はあまりに切実で、見る者の心に深く刻まれた。


