「せやかて工藤」と実は言ってなかった…『名探偵コナン』有名ネットミーム、原作のシーンを振り返るの画像
青山剛昌『名探偵コナン』(小学館)第7巻

 2026年でテレビアニメ30周年を迎える、青山剛昌氏の大人気作品『名探偵コナン』。2025年公開の劇場版『名探偵コナン 隻眼の残像』は興行収入144億円を突破し、観客動員数は2作品連続で1000万人を超えるなど、国民的な人気を誇る。

 『名探偵コナン』はネット上でも「ネットミーム」という形で愛されており、「バーロー」や「妙だな…」など、例を挙げればキリがない。

 この記事では、『名探偵コナン』の特に有名なネットミームについて、本編に登場するのか、元ネタがあるのかを振り返っていこう。

 

※本記事には作品の内容を含みます 

■舐めちゃダメ!「(ペロ)こ、これは… 青酸カリ!!!!!」

 『名探偵コナン』のネットミームと聞いて真っ先に思い浮かぶのは、「(ペロ)こ、これは… 青酸カリ!!!!!」ではないだろうか。

 これは主人公の江戸川コナンが、床に散らばった粉末を舐めて正体を突き止めるという内容だ。このネットミームは非常に有名で、作品と無関係な文脈でも、青酸カリというワードが出た時点でコメントされるほど浸透している。

 しかし、青酸カリは、少量であっても絶対に口に入れてはならない毒物だ。致死量は体重1kgあたり200mg~300mg程度と言われており、指についた粉末でも舐めれば命にかかわる。

 では何故コナンが無事なのかと言うと、実際に青酸カリを舐めるシーンは本編に存在しないからである。よく目にする青酸カリのミーム画像は文字が改変されており、本編でコナンが舐めているのは違法薬物の粉だった。

 元ネタのセリフは「こ、これは… 麻薬!!!」。コミックス7巻、アニメ11話の『ピアノソナタ「月光」殺人事件』で登場するシーンだ。青酸カリでなかったとしても、得体の知れない粉末を舐める行為も危険なのだが……。

 ちなみにコミックスでは「ペロ」という効果音とともに実際に粉を舐めているが、アニメ版ではコナンが匂いを嗅ぐのみに変更されている。

 特定の違法薬物は独特の苦みがあるため、味での判別は不可能ではないようだ。しかし警察の公式見解によれば、犯罪現場の捜査において、違法薬物の可能性がある粉を舐めることは絶対にないとのことだった。

 正体不明の白い粉を躊躇なく舐められるコナンの度胸は、見方を変えれば面白く映る。「もし青酸カリだったらどうするんだ」というツッコミの意味も込めて、今後も広く使われ続けるネットミームだろう。

■実は全然言っていなかった「せやかて工藤」

 青酸カリのミームと並び、コナンを代表するネットミームと言えば「せやかて工藤」だろう。これは西の高校生探偵・服部平次の、コナン(工藤新一)に対するセリフが元ネタだ。

 コナンの正体を知っている服部は、周囲に人がいない場面でコナンのことを「工藤」と呼ぶ。しかし、いくら2人きりとはいえ、服部はコナンの正体が露見しかねないほど頻繁に名前を呼んでしまうふしがある。それを面白がったミームといえるだろう。

 服部平次といえばこれ、と言ってもいいくらいネット上では有名なミームだが、実はこのセリフ、彼は本編で1度も口にしていない。

 一応、「せやけど工藤」や「それより工藤」など、意味が近いセリフは登場している。前者が登場したのは、コミックス56巻、アニメ491話の「赤と黒のクラッシュ 発端」。後者が登場したのは、コミックス36巻、アニメ292話の「孤島の姫と龍宮城(追求編)」だ。

 語感の良さに加え、コテコテの関西弁を話す服部に「せやかて」という言葉が合っている事から、違和感なく受け入れられてきたのだろう。また反論や話題転換の際に使いやすい使い勝手の良さも、流行の理由の1つなのかもしれない。

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