『名探偵コナン』は原作だけでなく、アニメも絶大な人気を誇る。アニメでは原作にないオリジナルストーリーが楽しめ、奇想天外すぎる展開のエピソードが話題になることも多い。
アニメオリジナルの回、通称アニオリ回では、原作のような本格ミステリーだけでなく、コメディに振り切った回や予測不可能なカオス回など、振り幅の大きいストーリーからも目が離せない。そこで今回は思わずツッコミたくなる、奇想天外な展開で語り継がれているアニオリ回を紹介していこう。
※本記事には作品の内容を含みます
■急激に伸びるタケノコが凶器⁉315話「陽のあたる場所」
初期の名作としてよく知られているのが、315話「陽のあたる場所」だ。こちらはトリックが奇想天外で、現実的に可能なのかと思考をめぐらせてしまうほどだ。
物語は毛利小五郎、江戸川コナン、毛利蘭の3人が、知り合いの日本画家・早河静山の別荘を訪れるところから始まる。弟子である黒木二郎によると、彼はスランプから指が震えるようになってしまい、自殺未遂までしたという。
実際に会ってみると、一見したところ元気そうな静山。しかし次の日、彼は竹林で竹にロープを巻いて、自ら命を絶ってしまった。
周囲の状況から違和感を覚えたコナンは、これを殺人と確信する。犯人は黒木であり、実は静山の「ゴースト画家」として絵を描かされていたことが大きな動機になっていた。
事件そのものはシンプルで、ミステリー初心者でも楽しめる作風だ。しかし、この作品の注目ポイントは犯人ではなく、その殺害方法にある。
鍵となったのは、「タケノコの成長速度」だ。タケノコは日光を浴びると急激に成長する性質を持つ。それに目を付けた黒木は早朝、睡眠薬を飲ませた静山を竹林まで運び、まだ短いタケノコにロープを括り付けておいたのだ。
周囲の竹を切り、ロープを静山の首に巻く。やがてタケノコに日が当たり、急激に伸びてしまう。すると、自動的に竹で首をくくった遺体が完成するというものだ。
竹の成長速度は非常に速いというが、本当に計画通りにいくのか……。いろいろと疑問が湧き上がるこのトリックは、「迷トリック」としてファンの間でもよく知られている。
犯人のアリバイ工作や、ウグイスの声がトリックを暴くヒントとなるなど、ミステリーとしての純度は高い。しかし、それ以上にタケノコに意識が持っていかれる、印象深いエピソードだ。
■コミカル過ぎて目を疑う⁉943話「東京婆ールズコレクション」
シリーズ屈指のコミカルな回といえば、943話「東京婆ールズコレクション」だ。
物語は、毒島豊子という美しい女性ファンから小五郎に招待状が届き、コナンとともに彼女が営む月島のもんじゃ焼き屋に向かうところから始まる。
しかし、そこにいたのはハイテンションの老婆。美しい女性としての姿は、メイクで作り上げたものだったのだ。小五郎は驚きのあまり頭をぶつけて失神してしまったが、豊子のもんじゃ焼きを食べて機嫌を直す。
そこで事件が起こる。3人で一緒にもんじゃ焼きを食べていた時、そこに入っていたキャベツの芯によって、豊子が窒息しかけてしまうのだった。何とか芯を吐き出し危機を脱した彼女だったが、幼なじみ3人が犯人の候補だと話す。この時の「誰かがあたしを殺そうとして、もんじゃにキャベツの芯を入れたのよ!」というセリフは、このエピソードのカオスな世界観を象徴している。
コナンと小五郎はその3人に話を聞くが、いずれも強烈な個性を持っていた。ハイテンションでまくしたてる老婆たちに、小五郎は辟易としてしまう。しかし、コナンは3人の話を聞くうち、違和感に気が付く。
実はこの事件は4人の老婆の狂言であり、彼女たちが企画した「東京婆ールズコレクション」に注目を集めるため小五郎を利用したに過ぎなかった。老婆がノリノリでダンスを始めたり、メイクがバキバキになって崩れ落ちたりと、普段の『名探偵コナン』とテイストが違い過ぎて、放送当時はネット上でも大きな話題になったほどだ。
この物語の脚本家は、浦沢義雄さん。浦沢さんといえば、コナンの中でもカオスなアニオリ回を生み出すことで定評があり、ファンの間では「浦沢回」と呼ばれるほどの注目度を誇っている。
パワフルな老婆たちに振り回されるコナンや小五郎の姿はレアで、終始圧倒されつつ笑ってしまう。また、老婆たちに目が行きがちな一方、それぞれの証言の違和感から真相にたどり着く流れは、ミステリーとしても洗練されていた。


