■手に入れた子どもはいるのか…最強攻撃力誇る『ワタル』のタスマニアンソード
最後は『魔神英雄伝ワタル外伝』(1990年、ハドソン)から、タスマニアンソードを振り返りたい。
『魔神英雄伝ワタル』は、1988年に放送されたサンライズ制作によるアニメで、ストーリーが重かった『機動戦士ガンダム』シリーズと違い、主人公のワタルたちの等身を低くするなど低年齢層の視聴者を意識して作られた作品である。当時ファミコンをプレイしていた子どもたちにも人気のアニメだった。
そして本作『魔神英雄伝ワタル外伝』は、そんな人気アニメを原作としたアクションRPG。ストーリーやシステムが作り込まれており、「キャラゲーとしてかなりの名作」とゲームファンからの評価も高い。
さて、本作に登場する最強の武器が「タスマニアンソード」である。
店で売っている最強の武器「エクスカリバー」の攻撃力が34であるのに対し、タスマニアンソードのそれは驚きの80。あまりにも強力な武器であり、当時の子どもたちにも探し回った人は多かっただろう。だが、攻略本に掲載されているものの、入手できたという話は聞かず、都市伝説のような幻の存在であった。
そんなファミコン時代を代表するレアアイテムである「タスマニアンソード」。当時は誰も手に入れることができなかったこの武器だが、インターネットが発達した現代ではその入手までの道のりが語り継がれており、ラストダンジョンに出現するザコ敵・ヘルサンダーの2体編成からの獲得が報告がされている。
知る人ぞ知る名作、しかも恐ろしいまでの厳しい条件でのみ獲得できるアイテム。こういったファミコン時代の“お宝情報”を聞くと、今あえて挑戦したくなるという人も少なくないのではないか。
インターネットが普及した現代ではゲームの攻略情報も簡単に調べることができる。だが、当時は、正確な情報は雑誌や攻略本からしか得られなかった。そのため、子どもたちの間ではゲームに関する噂や情報が飛び交い、結果的に嘘の情報だった、というアイテムも少なくなかった。
だが、噂の真実を確かめるためにプレイする当時の少年少女たちは、間違いなく宝物を求めるトレジャーハンターそのものだったのだ。
ネットにより便利な世の中になった反面、噂をもとに宝を探し求めるというワクワク感を味わうことはもうないのかと思うと、一抹の寂しさを感じてしまうのは筆者だけであろうか。


