
2025年9月19日に公開された劇場版『チェンソーマン レゼ編』が、公開から1か月で興行収入65億円を突破。さらに、オープニング曲『IRIS OUT』(米津玄師さん)はオリコン・Billboard JAPAN観測史上、“史上最速”でのストリーミング1億再生を突破するなど、快進撃を続けている。
音楽・戦闘シーン・新たなキャラクターの登場や演出など絶賛の声が上がる中、特にSNSを中心に「映画翌日からレゼに会いたすぎる」「もうレゼロスすぎて辛い」「仕事が手につかない」など、本作の重要キャラであるレゼを絶賛する声が多々見られる。
かくいう筆者も、今や他の作品のことが考えられないほどの「レゼロス」状態……。寝ても覚めてもレゼの顛末を反すうしてしまい、恋煩いのような症状に悩まされる毎日だが、その要因はひとえに、レゼ役を務めた声優・上田麗奈さんの演技にある。
なぜ彼女の声は観客を惹きつけてやまないのか? 本稿では上田さんの過去作も振り返りつつ、彼女の演技が持つ魅力を考えていきたい。
※本記事は劇場版『チェンソーマン レゼ編』の核心部分の内容を含みます。
■2022年、アニメ『チェンソーマン』最終話で明かされたレゼの声「え!?上田麗奈さん?」
2022年12月、アニメ『チェンソーマン』の最終話が放送された際、ラスト20秒のシーンにレゼと思われるキャラが登場した。当時はまだ正式発表はなかったが、透明感のある声色から上田麗奈さんがレゼ役であることが判明し、視聴者も驚きをもって受け止めたかもしれない。
富山県出身の上田麗奈さんは、声優志望だった友人の影響もあり、高校3年時に声優オーディションに参加。2013年に放送された『イナズマイレブンGO ギャラクシー』のカトラ・ペイジ役で声優デビューを果たし、以降は生徒役、観客役などの下積み期間を経て、2015年には第9回声優アワード新人女優賞を受賞した。
上田さんがこれまでに演じたキャラには『サクラクエスト』の四ノ宮しおり、『女子高生の無駄遣い』の久条琥珀など、主役を際立たせ、物語をサポートするようなおっとりとしたキャラクターが多い。
また最近ではメインヒロインを務めることも多く、『わたしの幸せな結婚』の斎森美世、昨年放送の青春恋愛アニメ『アオのハコ』の鹿野千夏など、柔らかで透き通るような清涼感のある演技でファンを虜にしてきた。優しさや儚さを伴うキャラクターとの相性が良く、YouTubeのコメント欄では「耳が溶ける……」「声が良すぎる」など、その声に魅了されるファンは後を絶たない。
■『タコピーの原罪』で見せた、静けさの裏にある狂気
そんな上田麗奈さんだが、今回のレゼ役はまさに納得の配役だったといえる。というのも、上田さんが演じるキャラクターは王道のヒロインだけでなく、レゼのような、どこか多面性をはらむキャラが多く存在する。静かで透明感のある声色は共通しつつ、強さ、飄々さ、陰湿さなど、同じキャラにもかかわらず、まるで違う顔を見せる演技が魅力でもある。
例えば、2025年の夏アニメとして放送された『タコピーの原罪』にて、上田さんが演じた主人公・久世しずかは、学校でいじめを受け、無口で感情を表に出さないキャラであった。しかし物語が進むと、クラスメイトの東直樹を説得するために甘い声で誘惑する魔性の女へと変貌。さらに、終盤でタコピーを踏みつけ「じゃあどうすればよかったの?」と問うシーンでは、当初のしずかからは考えられないほど冷たくドスの効いた声を出し、その恐怖をより助長させた。
そのほかにも、『SSSS.GRIDMAN』の新条アカネや、PS VITA用ゲーム『Caligula』に登場したμ(ミュウ)など、静けさと狂気をシーンによって使い分ける演技は非常に評価が高く、「ヤバい女」を演じさせれば、上田さんの存在感は唯一無二ともいえる。