■亜弓のイメージが覆る! 役になりきるためホームレスに「王子とこじき」
マヤの永遠のライバルである亜弓は、大女優の母と著名な映画監督の父を持つ、まさに演劇界のサラブレッド。マヤとは違い、生まれ持った環境と才能に恵まれているため、ともすれば努力をしなくても女優としてやっていける存在であった。
しかし、そんな亜弓のイメージが覆されたのが「王子とこじき」の舞台である。亜弓は女優として成長したいという理由から、自ら王子とこじきの1人2役に志願する。
そして役になりきるため、稽古の初日に自ら髪の毛をばっさりと切り登場。さらに、役柄のように実際に路上で生活をして、偶然通りかかったマヤと目が合うと、自信に満ちた表情でニヤっと笑ってみせるのである。
そのときのマヤは「亜弓さん…」と絶句し、衝撃のあまり震えている。まさかあの亜弓が舞台のためにここまでやるとは、想像もしていなかったのだろう。
亜弓はすべてにおいて恵まれた人物ではあるものの、その立場にあぐらをかくことなく、マヤと同様、あるいはそれ以上の努力を続け、演技に磨きをかけていくのである。
■感電事故で開眼!「奇跡の人」
さらに亜弓は舞台「奇跡の人」で三重苦の少女ヘレン・ケラーを演じるため、とんでもない訓練をいくつもしている。この舞台において、ヘレン役は亜弓とマヤとのWキャストだった上、サリバン役は自身の母・姫川歌子が務めるとあって、絶対に負けられないと当初から亜弓は鬼気迫る様子を見せていた。
印象的だったのは、ヘレンが水に触れて言葉を理解する重要な場面、「ウォーター」というセリフの真髄を習得するための稽古模様だ。
ヘレンの気持ちを掴もうと、洋服のまま風呂場で水を浴びまくる亜弓。それでも納得がいかず、洗濯機の中で渦巻く水を見つめ続ける。と、ここで、抜けかけていた電源コードに気づき、濡れた手でおもむろにコードを触ってしまい、感電してしまうのである。
なんとかコードを抜いてことなきをえたのだが、この感電の経験から亜弓はヘレンが言葉を得た瞬間の気持ちを習得し、舞台ではまるで雷に撃たれたような見事な演技を披露するのであった。
これについては偶然の産物ともいえるが、感電という経験と自身の演技を結びつけてしまうとは、彼女がいかに演劇のことだけ考え、ストイックに生きているかがうかがえる。
この舞台以降も、亜弓は役を習得するまで徹底した観察と常識外れの稽古を続けていく。その不屈の精神は、マヤに勝るとも劣らないものなのである。
こうして振り返ってみると、マヤも亜弓も、一歩間違えれば命を落としかねないハードすぎる稽古や経験を積んでいる。それが素晴らしい演技を生み出しているのは事実であるが、ここまでしないと伝説の舞台「紅天女」を演じることはできないのだろうか。
なにはともあれ、演劇は命あってこそできるもの。2人にはもう少し自分を大切にしながら特訓してほしいものである。


