■推しは千代の富士? 相撲好きな一面
ジョジョ第3部が連載を開始した1989年当時、日本は空前の相撲ブームに沸いていた。「ウルフ」の愛称で親しまれた大横綱・千代の富士に国民栄誉賞が授与されたのもこの年で、その後間もなく若花田・貴花田の若貴ブームが訪れるなど、大相撲がとくに盛り上がった時代だ。
こうした時代背景の頃の主人公だからか、承太郎は相撲をこよなく愛している。登場当初の留置所のシーンでは、スタンドが勝手に差し入れた『週間少年ジャンプ』を読みながら、ラジカセで大相撲の中継を聴く一幕も。おそらく彼の“推し”であろう千代の富士が14戦全勝を達成した瞬間を聞いて、リラックスしていた。一見、興味がなさそうな態度をしていた、本当は飛び上がって喜びたいくらい嬉しがっていたのかもしれない。
また、ズィー・ズィーのスタンド「ホウィール・オブ・フォーチュン」との戦い中にも、相撲好きの一面を見せる承太郎。
絶体絶命の場面で、花京院に「ところでおまえ相撲好きか?」と問いかけ、さらに「とくに土俵際のかけひきを!……」「手に汗にぎるよなあッ!」と続けながら、起死回生の一手を打ち、ピンチを脱出するのである。
このシーンでは、彼が相撲のどんなところが好きかが伝わってくる。その直後、花京院から「ええ…相撲大好きですよ」「だけど 承太郎 相撲じゃあ拳で殴るのは反則ですね」とジョークを返され、“ニヤリ”とニヒルに笑うところなどは、2人がただの仲のいい同級生のように見えて微笑ましい。
承太郎が垣間見せる可愛い一面はまだまだある。たとえば、先ほどの「ホウィイール・オブ・フォーチュン」戦のラストでは、みるみるしぼんでいく敵スタンドを見ながら、屈託なく仲間と一緒に笑う姿も“彼らしくなく”印象的だ。特にテレビアニメ版では、原作以上にニッコリとした笑顔が描かれている。
ひたすらにカッコいい無敵なヒーローという側面だけでなく、時たま17歳という年相応の可愛さを見せる。承太郎が多くの読者に愛される理由の一端は、そんなギャップに隠れているのかもしれない。