荒木飛呂彦氏が描く能力バトル漫画『ジョジョの奇妙な冒険』は、現在『ウルトラジャンプ』(集英社)で第9部が連載中の長期シリーズである。
部ごとに主人公が代替わりするのが特徴の本作。登場するどの「ジョジョ」も個性的で甲乙つけがたいが、人気や知名度でいえば、第3部『スターダストクルセイダース』の空条承太郎は屈指の主人公といえるだろう。
無敵と呼ばれるスタンド「スタープラチナ」を操り、卓越した頭脳と何事にも動じないクールさ。あらゆる困難を打ち砕く承太郎はとてもカッコよく、多くのジョジョファンの憧れだ。
そんな承太郎だが、実は第3部の作中では当時17歳の高校生らしい「可愛い」一面を時々見せている。大人びた風格からはとても想像できないそのギャップは、ふとしたタイミングで顔を出し、読者を驚かせてきた。
今回は『ジョジョ』シリーズを代表するスーパーヒーロー、空条承太郎が見せた意外な一面をお見せしよう。
※本記事には作品の内容を含みます
■ジョセフを最初は「おじいちゃん」呼びしていた
承太郎の初登場は、原作第12巻「悪霊にとりつかれた男の巻」における留置所の牢屋でのシーンだ。母親・空条ホリィに「やかましい! うっとおしいぞこのアマ!」と暴言を吐くという、衝撃的なデビューを飾った。
承太郎は、自分に取り憑く正体不明の悪霊(スタンド)が周囲を巻き込まないよう、自ら牢屋に籠もっていた。そんな彼の元を訪れたのが、ホリィから連絡を受けて駆けつけた祖父のジョセフ・ジョースターだ。
承太郎は鋭い目つきでジョセフを睨みつけ「消えな」と言ったかと思えば、続けてこう言う。「ニューヨークから来てくれて悪いが…おじいちゃんはおれの力になれない…」と。
後のシリーズで定着するじじいという呼び方のイメージが強いため、意外に思われるかもしれないが、実は最初はおじいちゃんなんて年相応の子どもらしい呼び方をしていたのだ。身長195cmで筋骨隆々な肉体を持つ承太郎からおじいちゃんと呼ばれたらちょっと怖い気がするが、相手はあのジョセフなので心配ないだろう。
ちなみに承太郎のおじいちゃん呼びは次第に変化し、留置所から出てカフェでジョセフの「ハーミットパープル」を見た際にはじいさん、空条家で花京院典明を治療する頃には、ファンにはなじみ深いじじいとなっている。
粗暴になったようにも見えるが、筆者はむしろ逆だと思う。自分に取り憑いた悪霊の正体を看破し、自分と同じスタンド使いであるジョセフに親近感を抱き、より親しみを込めてじじいと呼ぶようになったのではないだろうか。
■ポルナレフに披露した意外な「かくし芸」
冷静でぶっきらぼうなイメージが強い承太郎だが、エジプトへの過酷な旅路において、心を開いた仲間たちとは高校生らしい一面を見せていたことがうかがえる。それが明らかになるのが「エジプト9栄神」のスタンド使い、オインゴ・ボインゴ兄弟に襲撃された際のエピソードだ。
変身能力を持つスタンド「クヌム神」で承太郎に化けたオインゴに対し、そうとは知らないジャン・ピエール・ポルナレフは彼を本物の承太郎だと思って「例の特技やってくれよ」とねだる。その特技というのが、“火のついたタバコを口の中にしまい、鼻から煙を出す”という、一昔前の宴会芸みたいな技だった。しかも「タバコを5本同時に口の中に入れ、火を消さずにジュースを飲む」なんて離れ業もできるらしい。
あのクールな承太郎が、そんな隠し芸のような特技をわざわざ練習したり、仲間に見せたりしている事実がすでに面白い。
クールな承太郎がそんな特技を持っていて、それをポルナレフに見せびらかしていたと考えるととても面白い。作中では承太郎に化けたオインゴが隠し芸にチャレンジして大失敗していたが、承太郎本人がやるシーンをいつか見てみたいものだ。


