■ 平成生まれだから実感した「ゼルダらしさ」
ゲームとしての表現方法は大きく変化したが、「敵の挙動観察→対策立案→実行→失敗→再挑戦」という循環は、初代『ゼルダの伝説』から一貫している。
『時のオカリナ』で立体的な読み合いを覚え、『ブレス オブ ザ ワイルド』で自由度の拡張を体験してきた自分から見ても、本作は「試し、学び、突破する」という『ゼルダ』シリーズの核をしっかりと体現しているように思えた。
とはいえ、リンクの攻撃のリーチの短さにはとにかく苦労させられた。キャラクター1人分程度のリーチしかないため、先述のアイアンナックとの戦いは、ほぼ互いの攻撃が当たるという間合いで、上段と下段を織り交ぜたチャンバラを繰り広げる必要がある。
それに『ゼルダの伝説』ではさほど脅威には感じなかった、敵のブーメラン攻撃が恐ろしく避けにくい。『スーパーマリオブラザーズ』シリーズに登場するブーメランブロスよりも攻撃が激しいのではないかと思ったほどだ。
しかし、この脅威も「下突き」という技を覚えることでかなり軽減され、道中やボス戦もいくらかラクになった。しかし、アイアンナックに下突きは効かないので、ゼロ距離での読み合い勝負からは最後まで逃れることはできなかった。
そして後から世間での評価を見て、「やっぱり」と思ったのがデスマウンテンの難しさだ。ファミコン時代のゲームでは当たり前だった「マップの不親切さ」もあって、迷路のように入り組んだ地形に強力なモンスターがはびこるデスマウンテンは、相当な難所に感じられた。
回復手段が乏しく、戦闘能力もそこまで高くない段階なのに、迷いやすい&敵が強いデスマウンテンは、まともにプレイしていたら何度もゲームオーバーを味わったことだろう。当時のプレイヤーたちに敬意を表しつつ、筆者は巻き戻し機能をフル活用させていただいた。
■ゲームメーカーの垣根を越えたウィンク
水の町サリアにある墓標を調べると「ユウシャ ロト ココニネムル」というメッセージが表示される。これは言うまでもなく『ドラゴンクエスト』の勇者をモチーフにしたスタッフの遊び心の表れだと思われるが、任天堂のゲームが他社作品を取り上げるのは珍しい。
ちなみに『リンクの冒険』から約11か月後に発売された初代『ファイナルファンタジー』には「リンクの墓」が登場。今では『ドラクエ』と『FF』はどちらも同じスクウェア・エニックスの作品なので、返礼的なやりとりのように見えて、実は当時の『ドラクエ』はエニックス、『FF』はスクウェアと、それぞれ別メーカーの作品だった。
これはオフィシャルのクロスオーバーではなく、同時代の名作へ目配せするイースターエッグ的なやりとりだったと思われる。互いに切磋琢磨しながら同時代の作品に敬意を払う“往復書簡”的なおおらかな空気が、80年代のゲーム文化の厚みを育んだことを想起させてくれた。
改めてプレイしてみて『リンクの冒険』は、純粋にアクションRPGとして歯ごたえがあった。NSOの救済機能を前提にするならば、当時の難易度も現代的に噛みしめることができ、3Dの『ゼルダ』で育った筆者のような世代にも強く推奨できる。
1987年生まれの『ゼルダ』シリーズに触れ、ロトの墓に微笑みつつ、当時のゲームクリエイターたちの相互リスペクトの温度を感じてみるのも一興かもしれない。







