■自分と触れた物の音がなくなる…それだけ?「ナギナギの実」

 「ナギナギの実」の能力者は、王下七武海ドンキホーテ・ドフラミンゴの実弟であり、かつて海軍本部に所属していたドンキホーテ・ロシナンテ(通称:コラソン)だ。

 能力者は自身から発せられる音、さらには触れた相手や物体の音を完全に消し去る“無音人間”となることができる。さらに、自らの周囲にドーム型の防音壁を作り、その内外で音を完全に遮断することも可能だ。

 その効果はあくまで“音を消す”ことに限られている。攻撃力を高めたり、相手を直接的に制圧したりする力はないため、一度姿を発見されてしまえば、あとは使用者本人の戦闘力に依存する部分が大きい。純粋な戦闘能力としては、扱いづらい能力と言えるだろう。

 この能力が真価を発揮するのは、やはり隠密行動の場面だ。作中では、バズーカの音をかき消して発射し、無音で大爆発を引き起こすなど、まさに裏方向きの使い方をしていた。

 直接的な攻撃力こそないものの、使い手次第では大きな可能性を秘めた能力として評価されている面もある。たとえば、スクラッチメン・アプーの音を操る「オトオトの実」や、劇場版『ONE PIECE FIRM RED』に登場したウタの「ウタウタの実」に対しては、完全な天敵となりうる。

 さらにファンの間では、音=空気の振動という原理に着目すれば、超人系の悪魔の実の中でも最強格と謳われる「グラグラの実」の“振動”さえも無効化できるのではないか、という考察も存在する。

 もっとも正面切っての戦闘向きでないことには変わりはないため、やはり相当の実力者でなければ、このナギナギの実の真価を発揮するのは難しいだろう。

 

 『ONE PIECE』には多種多様な悪魔の実が登場するため、ファンの間では“最強議論”ならぬ“最弱議論”もにわかに盛り上がりを見せている。

 ただ、どのような能力でも使い方次第であることはCP9のロブ・ルッチが語っている通りで、一見弱そうに見える能力でも鍛錬と工夫によって強力な力に昇華している者もいる。

 今回紹介した悪魔の実も直接的な戦闘力こそ低いが、どれも諜報活動やサポートといった方面ならば唯一無二の活躍が期待できそうなポテンシャルを秘めている。

 悪魔の実の価値は、戦闘力という一面だけでは決して測れないのである。

  1. 1
  2. 2
  3. 3