
バトル漫画の醍醐味、それは誰も予想できない“たった一撃”が勝負を決める瞬間にある。追い詰められ、満身創痍の中で放たれる逆転の一手。その一瞬の閃きと諦めない執念こそが、読者の心を最も熱く震わせるのだ。
今回は、そんな「そう来ると思わなかった!」と誰もが驚嘆した、意外性とドラマ性に満ちた“渾身の一撃”を厳選して振り返っていこう。
※本記事には各作品の内容を含みます
■『NARUTO-ナルト-』土中からの奇襲! ナルトが執念で天才を打ち破る
1999年より連載が始まった、岸本斉史さんのバトル漫画『NARUTO-ナルト-』。
本作において印象的だった渾身の一撃といえば、中忍試験トーナメントでおこなわれた、日向ネジVSうずまきナルトの戦いを思い出す人も多いのではないだろうか。天才と落ちこぼれ、運命と努力という、本作を象徴するテーマがぶつかり合った名勝負である。
日向一族の分家に生まれながら、宗家をも凌ぐと評されるネジは、白眼と柔拳を扱う天才であった。相手のチャクラの流れを見抜く日向一族の血継限界・白眼と、相手の経絡系を正確に突く体術・柔拳は、攻守ともに隙がない。その圧倒的な実力差を前に、ナルトの影分身も次々と打ち砕かれ、誰の目にも勝敗は明らかに思えた。
だが、ナルトにはこの戦いに絶対に譲れない理由があった。予選でネジは、同じ日向一族のヒナタを容赦なく痛めつけ、彼女の努力と優しさを“無駄だ”と言い放った。その非情な言葉に怒りを燃やしたナルトは、倒れたヒナタのためにも“絶対に勝つ!”と約束していたのだ。
そして限界を超えた攻防の末、地面に倒れるナルト。しかしここで戦いを決定づけたのは、まさにナルトの“意外な一撃”だった。
地面に倒れていたのは影分身であり、本体は地中に潜んだナルト。そしてネジの真下から飛び出すように現れ、強烈なアッパーカットを叩き込む。それは派手な忍術でも、一族の力でもない。ただひたすら勝つことだけを信じ、諦めない執念が生んだ一撃だった。
■『ドラゴンボール』初めての“舞空術”! 悟空が空から放った体当たり勝利
1984年から連載が開始され、バトル漫画の金字塔として名を馳せる鳥山明さんの『ドラゴンボール』。本作にも意外な一撃はたびたび登場しているが、とりわけ読者に驚きを与えたのが、第23回天下一武道会の決勝戦、孫悟空VSピッコロ(マジュニア)でのワンシーンだ。
これは、悟空少年期の集大成にして『ドラゴンボール』前半最大の名勝負。満身創痍の悟空が土壇場で見せたのは、誰も予想しなかった一撃だった。
これまでの悟空は、移動の際は筋斗雲に乗り、戦いではかめはめ波を使ってその反動で一瞬だけ宙を舞うことはあっても、空を自在に“飛ぶ”描写は一度もなかった。ギャグ描写として尻尾を回して浮かぶ程度のことはあったものの、基本は“地上戦の戦士”というイメージが強かった。
そんな中、決勝戦のクライマックス、ピッコロの攻撃で胸を貫かれ絶体絶命の悟空。ピッコロは悟空の四肢を痛めつけ、徹底的に封じ、そして上空から強烈なエネルギー波を放った。辺り一面が木っ端微塵に吹き飛んだ描写に、仲間も読者も悟空の敗北を確信した。
しかし、次の瞬間、ピッコロの背後に小さく見えたのは、舞空術で宙に浮かんだ悟空の姿。落下の勢いをそのままに、渾身の頭突きを喰らわせ、ピッコロを場外へと叩き落としたのだ。
これが悟空にとって初の舞空術使用であり、3度目の挑戦にして、ついに天下一武道会優勝を果たした瞬間であった。一瞬の閃きと応用力で掴み取った逆転勝利。それは悟空少年期の終章を飾るにふさわしい瞬間だった。