髙石あかり主演・NHK連続テレビ小説『ばけばけ』“ちびトキ”福地美晴のかわいさあふれる名シーンの画像
『ばけばけ』ポスタービジュアル (C)NHK

 2025年9月28日から放送が始まったNHK連続テレビ小説『ばけばけ』。明治時代の島根県松江市を舞台に、「この世はうらめしい。けど、すばらしい。」というキャッチコピーのもと、小泉セツと作家・小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)の夫婦をモデルに、ヒロイン・松野トキと夫のレフカダ・ヘブンの半生をハートフルに描いている。

 怪談を愛するトキを演じるのは、映画『ベイビーわるきゅーれ』シリーズで一躍人気を博した髙石あかりさん。そして、放送開始からトキの幼少期を演じたのが福地美晴さんだ。

 ヒロインの人生を描く朝ドラでは、子ども時代は序盤の数週のみ。『ばけばけ』も同様に、第1週最終話の3日金曜日の放送でトキは大人の姿へと成長して登場することになったが、“ちびトキ”を演じた福地さんの可愛らしさに全国の視聴者が心を奪われることとなった。

 今回は、福地さんのキャリアを追いながら、作中で見せた可愛すぎる演技を振り返っていく。 

■アーニャ役も原作ママのかわいさ!福地美晴さんの軌跡

 太陽のような笑顔が印象的な福地美晴さんは、2015年生まれの10歳。

 俳優としての第一歩を踏み出したのは2023年。ミュージカル『SPY×FAMILY』の子役オーディションで、アーニャ役に大抜擢されたのがきっかけだった。子役指導の第一人者・森田倫代氏によれば、当時の福地さんには演技経験こそなかったものの、本を読むことが何より好きで、その読書量が想像力を育てていたという。基礎を少し教えるだけで、ぐんぐんと才能が開花していったと語る。

 舞台で見せた明るく元気なアーニャ役は原作のアーニャのかわいさそのまま。観客の心をつかみ、福地さんは一躍注目の新人子役になった。その後もレッスンを重ね、2024年には椰月美智子さん原作のNHK特集ドラマ『昔はおれと同い年だった田中さんとの友情』に出演。そして2025年、『ばけばけ』でついに連続ドラマ初出演を果たした。

 作中で演じた幼少期のトキ役は、674人もの応募者の中からオーディションで選ばれた大役だ。制作統括の橋爪國臣さんは、「福地さんは台本の読み込みが深く、それを自分の言葉に変えて表現する力があった」と起用の理由を語る。アーニャ役と同じように、台本から物語と役柄を自分の中に落とし込み、感性豊かに表現できるという想像力こそが彼女の最大の魅力なのだろう。

 作中での登場回は、第1週分の1話から4話まで。想像していたよりも早く大人時代に突入したこともあり、視聴者からは「もっと見たかった」「ちびトキちゃん見れないのは残念」との声も上がっていた。

■個性的な家族の中で無邪気な笑顔を見せるトキ

 時は明治30年代後半。物語は、松野トキが夫となるヘブンに「耳なし芳一」を語って聞かせる場面から始まる。話を終えると、ヘブンは「素晴らしいです、ママさん」とトキの手を取り、トキは微笑みながら「もう一つの話を」と自身の過去を語りはじめた。

 場面は一転。白装束に身を包んだ松野一家が庭で丑の刻参りをしている。なぜこんなことをしているかというと、理不尽なこの世を呪うため。松江藩の上級武士だった父・司之介(岡部たかしさん)が新時代の到来で職を失い、丑の刻参りをして苦難を乗り越えようというぶっ飛んだことを言い出したのだ。ちなみに、呪いの対象は新政府やペリーである。

 そんな父と祖父(小日向文世さん)を、あきれる母(池脇千鶴さん)らの傍らで見つめていたのが福地さん演じる幼いトキだった。

 翌朝、食卓には松野の朝に欠かせない母特製のしじみ汁が並ぶ。トキは汁を一口すすり、目を閉じて「ああ〜」と幸せそうに声をもらす。その姿に父ははしたないと怒るが、トキはいたずらっ子のようにもう一度「ああ〜」と笑ってみせる。

 ところがその日、学校で丑の刻参りをしていたことや、働かない父のことを同級生にからかわれてしまう。無職でも優しく、いつも面白くて大好きな父のことをバカにされ、トキは涙を流しながら「父上はダメじゃないよね?」と母に尋ねる。

 母の温かい言葉で笑顔を取り戻したトキは、自分が将来教師になって家族を養うと決意し、皆の前で宣言するのだった。自分が働かないために幼い娘から養う宣言をされるとは、父からすれば複雑な心境かもしれない。

 貧しくても、いつも明るく家族を守ろうと懸命なトキ。福地さんのみせる笑顔は、初回から視聴者の心をほっこりさせてくれた。また、しじみ汁を飲む姿はそのまま味噌汁のCMになりそうなくらい毎回美味しそうなものだった。制作陣が高く評価したというのも納得の名演だ。

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