■真相をあの世へ持っていく覚悟…season4第4話「密やかな連続殺人」

 season4第4話「密やかな連続殺人」は、特命係が前代未聞の連続殺人犯と対峙する壮大なエピソードだ。警察組織の弱点を突くような連続殺人事件に特命係が挑み、村木重雄という男が捜査線上に浮かび上がる。

 村木はきわめて危険な男であり、長年連続殺人を犯しながらも警察に捕まらないよう県境を超え、殺害方法も変えるという用意周到な殺人鬼だった。

 右京はわずかな綻びから村木を追い詰めていったが、彼は逮捕の直前、「お前達に私は裁けない。私は善悪を超えた存在なのだ」「捕まるくらいなら…自分で終わりにしてやる」と宣言する。そしてその言葉の直後、ビルから身を投げて自殺を遂げるのだった。飛び降りる直前、「Vim Patior」と謎の呪文を唱える姿は、脳裏に焼き付くほどに強烈だった。

 しかし、事件はこれだけでは終わらない。村木は直近3件の殺人には関与しておらず、それは事実上の後継者のような人物による犯行だった。村木はその真相すらもあの世へと持っていったのだ。

 13年もの間、連続殺人をひそかに犯し続け、真相が暴かれた直後に特命係の前で死亡した村木。後継者の存在を隠す目論見があったことも、彼の凶悪な思想を表している。

 

 右京の圧倒的な推理力をもってしても、時には犯人を逮捕できないこともある。今回紹介した3人の犯人はいずれも強烈な印象を残し、語り継がれる存在となった。

 殺されてしまったり、自殺してしまったりするパターンもあれば、片山のように狡猾な計画で特命係の追及を逃れる場合もある。こうした後味の悪さが残る回も、『相棒』ワールドに奥深さを生み出している。

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