
2025年に放送開始25周年を迎え、10月15日から「season24」がスタートするドラマ『相棒』シリーズ(テレビ朝日系)。主人公の杉下右京ら特命係は数々の難事件を解決してきたが、その一方で、犯人を法の裁きにかけられなかった事件も存在する。
そうした事件は謎が複雑に絡み合った展開が多く、後味の悪さと極上のミステリーが融合しているのが特徴だ。今回は、特命係でも解決できなかった、“犯人が捕まらない事件”を振り返っていこう。
※本記事には作品の内容を含みます
■衝撃の結末…season2第6話「殺してくれとアイツは言った」
season2第6話「殺してくれとアイツは言った」は、シリーズ屈指の後味の悪い結末を迎えるエピソードだ。
事件の発端は、人気犯罪小説家の菅原英人がラジオで「誰かに命を狙われてみたい」と発言したことだった。この発言の後、彼のもとには脅迫状と切断された人間の指が送りつけられ、特命係が護衛につくことになる。
特命係に対してもわがまま放題の菅原だったが、自宅に爆弾が届き、妻の珠江が命を落とす。悲しみに暮れる菅原だったが、右京はわずかな違和感を見逃さなかった。実は菅原は、献身的な妻を邪魔に思い、殺害計画を立てて実行したのだった。
ラジオの発言から爆弾事件まで、すべては菅原の思惑通りだったと推理する右京だが、決定的な証拠はない。特命係には、海外へ高飛びしようとする菅原を止めるすべがなかった。悔しさをかみしめて見送るしかない……そう思われた瞬間、1人の男が菅原の前に立ちはだかる。
そしてその男は、なんと手にしていたナイフで菅原を刺してしまった。「どうしてだ」と聞く菅原に、男は「だって、殺してくれって言ってたから…」と答える。妻殺害のカムフラージュとして発した言葉を真に受けた、熱狂的なファンによる凶行だった。
特命係は菅原を逮捕できなかったが、彼は自分の影響力を甘く見たことで死亡するという皮肉な結末を迎える。結末まで見終えるとタイトルの真の意味が分かり、ゾッとしてしまう名エピソードだ。
■悪女誕生の瞬間!season3第1~3話「双頭の悪魔」
season3第1話から3話連続で放送された「双頭の悪魔」は、稀代の悪女・片山雛子の初登場エピソードだ。数々の犯罪の陰に姿を見え隠れさせながらも、決して逮捕されない片山。この時に彼女を逮捕できていれば……と、後々まで悔いが残る事件である。
物語は、首相官邸が盗聴されているという衝撃の事実が明かされるところから動き出す。さらに盗聴器を仕掛けたと目された首相補佐官・沢村久重が自殺してしまう。
特命係はこれが殺人であり、その犯人が政界の大物、官房長官の朱雀武比古であると推理する。さらに首相秘書官である加賀谷秀乃も沢村と敵対していたため、関与が疑われる状況だった。
この事件のカギを握るのが、若手政治家として注目を集めていた片山だ。彼女は朱雀の陰謀に挑む特命係に情報を提供していたが、その正体は朱雀の愛人であり、裏で彼に情報を流していた。表向きは無害な人間を装いながらも、実は裏で策略を巡らせるという二面性が徐々に明かされていく。
最大の焦点は、片山が朱雀たちによる殺人について知っていたかということだった。
特命係に追い詰められた朱雀は、犯行時間には愛人である片山とホテルの一室にいたと主張する。この鉄壁のアリバイは崩せないかに思われた。しかし、片山は突如として朱雀が一時的に部屋を離れたと証言するのだった。
しかも自分はマッサージを呼んだために、確実にアリバイがあると主張。つまり、追い詰められた朱雀をあっさりと切り捨てたのだ。その証言が決め手となり朱雀は逮捕できたが、事件に関与していたとみられる片山を逮捕することはできなかった。
はたして、片山は殺人を知っていたのか。右京の追及も、不敵な笑みとともにはぐらかされるだけで終わってしまった。その後も彼女は数々の事件の裏にいながらも、追及の手を巧みに逃れていく。
特命係でも逮捕できない悪女・片山の初登場回として、見逃せないエピソードだ。