■シリーズ屈指の救いのないエピソード
続いて紹介するのは、『地獄少女 宵伽』(4期)の3話「いつか誰かが…」である。
祖母、母、父、姉の皆が性格に問題のある家庭で育った、幼い兄妹の亜希良と亜里奈。家族なのに日々互いが憎み合い、その酷さは「地獄よりも地獄みたいな家族」と形容されるほどだった。
兄の亜希良は家族全員を地獄に流したいと思い、それぞれに恨みを持つ人間を集めて地獄流しを提案する。しかし、自分が地獄に落ちるリスクは背負いたくないと断られてしまう。
悩んでいるうちに、家に暴力的ないとこが棲みつき、ますます危険な状況に。父も母も家を出ていき、ついにいとこは幼い妹に手を出し暴行を加える。
最終的に亜希良は、姉に恨みを持つ高校生と協力し、いとこと姉を地獄に流した。しかしその後も2人は「亜里奈のような子を1人でも助けるために」と称して、悪人の殺害に手を染めていく……。
やはり家族の血は争えないということなのだろうか。地獄に落ちる運命を逆手に取り、悪行の限りを尽くすというとんでもない展開には、つい目を覆いたくなった。
結局、両親が家に帰ってくることはなく、暴行された妹は荒れ果てた家で一人きり。誰にとっても救いのないトラウマ回だった。
■負の連鎖を感じさせるラスト
勧善懲悪ものが多いアニメ1期にも、同様の後味の悪さが残る回がある。5話「高い塔の女」がそれにあたる。
ここ数年で急成長した企業の女社長は、そのカリスマ性が高く評価されていたが、実はパソコンも扱えない人物だった。
その仕事の全てを押し付けられていたのは、万引きをネタに脅され、こき使われていた少女・美沙里。彼女は犯罪にまで加担させられていた。
しかし実は美沙里は、社長の本性を暴いて告発するために、わざとこの会社に潜入していたのである。その後、ようやく証拠を手に入れたものの命を狙われた美沙里は、急いで地獄通信にアクセスして藁人形の糸を引く。
こうして社長は無事に地獄に流され、一件落着……と、ここまでは『地獄少女』によくある展開だ。
物語のラスト、美沙里は高層ビルから外を眺め、「人生なんて所詮ゲーム、ゲームオーバーまで楽しんだ人間の勝ちなのよ」という社長の言葉を思い出して邪悪にほほ笑む。その姿は、人間の愚かさとこれからも続く負のループを感じさせるものだった。
『地獄少女』には「本当にスカッとした」という話もあるが、ほとんどの場合は、罪のない者まで不幸な目にあってしまう。今回紹介したのは「依頼者までおかしくなってしまう」後味の悪い話ばかりだが、他にも理不尽な話は数多くある。
このような悲惨なエピソードを振り返ると、もし自分に怨みを晴らしたい相手がいたとしても、藁人形の糸を引くのをためらってしまいそうだ……。