
尾田栄一郎氏の描く海洋冒険ロマン漫画『ONE PIECE(ワンピース)』(集英社)には、物語の重要なアイテムとして「悪魔の実」が存在する。その実を口にした能力者たちは、海に嫌われてカナヅチになるかわりに特殊な能力を得る。しかし最近になって悪魔の実の中に「特別な存在」が混じっていることが明らかになった。
それが“神”の力を宿した悪魔の実だ。主人公であるモンキー・D・ルフィが口にした「ゴムゴムの実」にはもうひとつ別の名前があり、太陽の神の名を冠していたのである。
そこで今回は神の力を宿した悪魔の実を食べたルフィを筆頭に、実は神の力を宿していそうな疑惑が持ち上がっている実力者たちを紹介しよう。
※本記事には作品の核心部分の内容を含みます。
■主人公が口にした神の名を持つ悪魔の実
数ある悪魔の実の中でも、異質で特別な存在として描かれている「神の名を冠する悪魔の実」。その存在が初めて読者に示されたのは、他でもない主人公のモンキー・D・ルフィにまつわるエピソードだった。
カイドウとの壮絶な決戦の末、ルフィは敗北を喫したかに見えた。だがそのとき、ルフィの身に“覚醒”が起こり、五老星の口から「ゴムゴムの実」のもうひとつの名が「ヒトヒトの実 幻獣種 モデル“ニカ”」であることが明かされた。
「太陽の神」と呼ばれるニカは、空想のままに戦い、人々を笑顔にして解放へ導いた伝説の戦士。つまりルフィの食べた「ゴムゴムの実」は、太陽の神ニカの力を宿した悪魔の実だったのである。
五老星いわく「覚醒はゴムの体に更なる“腕力”と“自由”を与える」「世界で最もふざけた能力」とのこと。実際にルフィは周囲の環境にまでゴムの特性を及ぼし、「雷をつかんで投げる」といった常識外れの技を披露する。
自由を体現したかのようなハチャメチャな戦闘スタイルを見せ、四皇カイドウと対等以上に渡り合い、ついに勝利をおさめた。
そして「動物(ゾオン)系」の悪魔の実には「意思」が宿るということが判明。この「ヒトヒトの実 モデル“ニカ”」は800年ものあいだ世界政府による回収を回避し続け、一度もその手に収まることはなかった。
こうした実の性質はかつて世界政府と敵対し、人々を解放へ導いたとされる「解放の戦士ニカ」の意思が反映されているのかもしれない。ルフィがその神の力を得たこと自体、あるいは必然だったのだろうか。
■“最凶”の悪魔の実が持つ「不自然すぎる特徴」
もともと白ひげ海賊団の一船員に過ぎなかった“黒ひげ”ことマーシャル・D・ティーチは、四番隊隊長のサッチを殺害して「ヤミヤミの実」を奪う。その力を得た後は一気に王下七武海にのし上がり、そして白ひげに成り代わるかたちで四皇の一角を担うまでに至った。
その勢いはとどまるところを知らず、ますます存在感を増している。彼がここまでの傑物となったのは、彼が手にした悪魔の実の力も大きいだろう。
黒ひげが最初に手にしたヤミヤミの実は、悪魔の実史上最も凶悪とされる。闇の力であらゆるものを引き寄せ、さらに触れた能力者の力を無効化するという他に類を見ない性質を持っていた。
思い返せば、バナロ島でエースと死闘を繰り広げた際、黒ひげは「この能力は俺を選んだんだよ」と、あたかも自らの意思ではなく、実の意思に選ばれたかのような発言をしていた。
先述のとおり、五老星は「動物系の悪魔の実には意思が宿る」と語ったが、ヤミヤミの実は「自然(ロギア)系」の実である。とはいえ作中のキーパーソンである黒ひげの発言だけに、どうしても意味深に聞こえてしまう。
またヤミヤミの実には、他の自然系にはない特徴がある点も見逃せない。本来、自然系の能力を得た者は、体自体を自然物に変化させて攻撃を受け流すことができる。しかし、ヤミヤミの実の能力者である黒ひげは、なぜか攻撃を受け流すことができないのだ。
他の自然系とは違う、こうした異質な点があることもヤミヤミの実の特殊さを物語っているようにも見える。
歴史研究が趣味の黒ひげであれば、どこかで神の名を冠する悪魔の実の存在を知ったとしても不思議はない。もしもヤミヤミの実が神の名を持つ実だったとすれば、手に入れるためにあれだけ執念を燃やしたのも頷けるだろう。