原作にいなかったっけ?『カードキャプターさくら』李苺鈴に『血界戦線』ホワイト…視聴者から人気を集めた「異例のアニオリキャラ」の画像
KCデラックス『カードキャプターさくら』第1巻(講談社)

 長寿アニメ『名探偵コナン』(青山剛昌さん)に登場する高木刑事は、今やすっかり主要キャラクターのひとりとして親しまれている。だが、実はもともとはアニメオリジナルの人物であった。その後、人気が高まったことで原作漫画にも“逆輸入”され、現在では作品に欠かせない存在となっている。

 アニメから生まれたキャラクターが原作へと進出する。この事実に驚いた人は少なくないだろう。

 このように、原作には登場しないのに、アニメで大きな活躍を魅せたキャラクターは意外と多い。今回は、その代表的な例をいくつか振り返っていこう。

 

※本記事には各作品の内容を含みます

 

■『カードキャプターさくら』恋のライバル・李苺鈴

 CLAMP原作の大ヒット作『カードキャプターさくら』に登場する李苺鈴(リ・メイリン)は、アニメで初めて姿を見せた完全なオリジナルキャラクターだ。主人公・木之本桜の恋の相手である李小狼の婚約者として登場し、大きな影響を与えた存在である。

 両サイドに結んだ黒髪のお団子ヘアに陰陽マークをあしらった特徴的なデザインのワンピースは、魔法少女コスチュームのさくらと好対照。実はこのデザインや人物像は、原作者であるCLAMPが監修しており、アニメオリジナルでありながら原作世界に自然に馴染んでいるのが印象的だ。

 原作では、柊沢エリオルが登場するまで、小狼とさくらの関係に“恋のライバル”は存在しなかった。しかしアニメ版では苺鈴の存在が加わることで、三角関係によるコミカルなやりとりや繊細な感情の揺れが描かれ、物語に新たな厚みをもたらした。

 苺鈴は魔法こそ使えないものの、卓越した武術の腕前で戦闘にも参加し、アクションシーンを一層賑やかにした点も見逃せない。とりわけ、レギュラー出演の最終回となる第43話「さくらのさよなら苺鈴」で描かれた“双(ツイン)カード”との戦闘シーンは圧巻だった。小狼との抜群の連携は、その絆を感じさせ、多くの視聴者に感動を与えた。

 最終的に苺鈴はさくらとも友人となり、笑顔で香港へと帰国する。原作には登場しないが、視聴者の心に強く残るキャラクターとなった。

 ちなみに、アニメ放送が始まった当時、原作『カードキャプターさくら』は月刊誌『なかよし』で連載真っ只中(1996年6月号〜2000年8月号)。そのため、どうしてもアニメの進行が原作に追いつきやすいという事情があったようだ。

 おそらく苺鈴はそのような背景のなか、生まれたキャラクターなのだろうが、彼女の存在は単なる“時間稼ぎ”にとどまらず、作品の彩りを大きく広げた好例といえる。

■『血界戦線』第1期のキーパーソン・ホワイト

 内藤泰弘さん原作の人気作『血界戦線』。テレビアニメ第1期で重要な役割を担った少女・ホワイト(本名:メアリ・マクベス)も、完全なアニメオリジナルキャラクターだ。

 長い金髪のツインテールに白いドレスをまとった姿は、儚げで印象的だった。アニメ第1話冒頭、主人公のレオ(レオナルド・ウォッチ)が彼女に手を差し伸べるという意味深シーンから始まるのも、その存在感を際立たせている。声を務めたのは釘宮理恵さん。繊細で透明感のある演技が、キャラクターの魅力をさらに引き立てた。

 アニメ第1期は原作の1話完結型エピソードをベースにしているが、その間を縫うようにホワイトとレオの交流が描かれ、作品全体に縦軸のドラマが生まれた。互いに惹かれ合うホワイトとレオ、そして彼女の双子の兄・ブラック(ウィリアム)を巡る物語は、最終話の壮大なクライマックスへと繋がっていくのである。

 ホワイトのキャラクター原案は、本アニメで監督を務めた松本理恵さんによるもので、原作者・内藤さんの監修を受けて設定された。完全なアニメオリジナルでありながら作品世界に違和感なく溶け込み、“アニメ版『血界戦線』ならではの象徴的存在”として多くのファンの心を掴んだのである。

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