
『ガンダム』シリーズでは、モビルスーツ等のマシンとパイロットをつなぐ、さまざまなシステムやインターフェースが存在する。
初代『機動戦士ガンダム』に登場したRX-78-2「ガンダム」にも「教育型コンピュータ」と呼ばれる制御システムが搭載されていた。この教育型コンピュータは戦闘データを学習する機能を有するほか、パイロットの操縦を補助して最適化をはかる役割も担った。
しかし技術が進歩するとともに、マシンに搭載されるシステムやインターフェースに危険な機能が含まれるものも登場する。中にはシステムの暴走による同士討ちや、搭乗パイロットの命を危険に晒すようなこともあった。
そこで今回は、特に危険なシステムやデバイスを搭載した機体をピックアップ。どのような危険をはらみ、なぜそのようなマシンが誕生したのかを振り返っていきたい。
※本記事には各作品の内容を含みます。
■暴走して同士討ちを誘発する恐ろしさ「EXAMシステム」
セガサターン用3Dアクションゲーム『機動戦士ガンダム外伝 THE BLUE DESTINY』(バンダイ)や漫画『機動戦士ガンダム外伝 ザ・ブルー・ディスティニー』(KADOKAWA)などに登場する「イフリート改」や「ブルーディスティニー」には、「EXAMシステム」と呼ばれるユニットが搭載されていた。
そのシステムの開発者は、クルスト・モーゼス博士。彼はジオン公国のニュータイプ研究機関「フラナガン機関」の出身で、ニュータイプを深く知るにつれて旧人類にとっての脅威だと思い込むようになる。
そして、オールドタイプがニュータイプを倒すシステムの研究に取り憑かれていくクルスト。もはや彼にとってジオンや連邦という垣根は関係なく、ニュータイプを抹殺することだけに執念を燃やし、より性能の高いモビルスーツを求めて連邦へと亡命した。
そこで陸戦型ジムや陸戦型ガンダムをベースに、EXAMシステムを搭載したブルーディスティニーシリーズが完成する。このEXAMシステムでは、ニュータイプに対抗するため、ニュータイプが誇る驚異の反応速度を擬似的に再現。戦場でニュータイプの脳波を検知すると、自動的に殲滅を開始する設計となっていた。
しかしEXAMシステム搭載のブルーディスティニー1号機は、試験運用から暴走を繰り返す。テストパイロットを再起不能にしたり、友軍を敵と誤認して交戦を続けたりと悲惨な事故を引き起こした。
システム稼働中はパイロットの操縦を受けつけず、リミッターが解除された機体は搭乗者の生命を考慮しない挙動をとるという恐ろしいものだった。
ニュータイプを検知するはずのシステムは、戦場での人の死や、強い殺気を感じることで暴走。同じEXAM搭載機同士ですらニュータイプと誤認するという致命的な欠陥を備えていたのである。
あまりにも危険すぎるシステムゆえに、ブルーディスティニー1号機に搭載されたEXAMシステムにはリミッターがかけられた。しかし、そもそも機体のリミッターを外すシステムにリミッターをかけるという本末転倒な点は否めない。
このEXAMシステムの発想はのちの宇宙世紀作品にも大きく影響を与え、「HADES」や「NT-D」といったシステムに受け継がれていった。
■パイロットの人格まで変貌させる「n_i_t_r_o」
PS3用のアクションゲーム『機動戦士ガンダムUC』(バンダイナムコゲームス)や、漫画『機動戦士ガンダム U.C.0094 アクロス・ザ・スカイ』(KADOKAWA)などに登場したMS「ガンダムデルタカイ」。同機は、百式の原型機である「デルタガンダム」の流れを汲む可変機である。
ウェポンラックにハイ・メガ・キャノン、背部バインダーにプロト・フィン・ファンネルといった多彩な武装を備えるが、その最大の特徴は新サイコミュシステム「n_i_t_r_o(ナイトロ)」を搭載している点にある。
このナイトロによって、ニュータイプ能力を持たないパイロットでもファンネルなどのサイコミュ兵器が使用可能になる。これだけ見ると、先述のEXAMシステムの上位互換のように見えることだろう。
しかしその実態は、ナイトロが起動するたびに無理やりパイロットの脳内を書き換えて、強引に強化人間化してニュータイプ能力をもたせるというもの。当然、パイロットの精神にとてつもない悪影響をもたらし、人格すら変えてしまうという非人道的なシステムである。
デルタカイのナイトロ起動時は、機体関節部から青い炎が吹き出すが、それこそがパイロットの脳内が書き換えられている証でもある。