■『NARUTO-ナルト-』不死身ゆえの反則技「呪術・死司憑血」

 岸本斉史氏の『NARUTO-ナルト-』において、思わず「そんなのアリかよ!」と叫びたくなる反則級の“初見殺し”といえば、暁の一員・飛段が操る呪術「死司憑血(ししひょうけつ)」だろう。

 飛段は、首をはねられても死なない不死身の肉体を持つ異端の忍だ。その特異な体質を最大限に活かしたのがこの「死司憑血」で、「相手の血をわずかでも体内に取り込めば、自らに刻んだ紋様と血の陣を媒介に、自身が受けた傷をそのまま相手に反映することができる」という恐ろしい術であった。

 つまり、不死身である飛段が自らの心臓を貫けば、相手の心臓も同時に貫かれ絶命してしまう。常識が一切通じない、あまりに理不尽極まりないものだった。

 アニメ第297話「棒銀」から本格的に描かれた飛段戦で、この術によって命を落としたのが、木ノ葉の上忍であり第十班の師・猿飛アスマである。

 暁の動向を追っていたアスマ班は、角都と行動する飛段と交戦。激闘の末、アスマの血を採取した飛段が術を発動。奈良シカマルら仲間が必死に抗うも虚しく、飛段が自身の胸を槍で突き刺したことでアスマも同じ致命傷を負い、そのまま力尽きてしまう。

 最愛の師であるアスマの死は部下や弟子たちの心に深い傷を残し、とりわけシカマルにとっては忘れられぬ因縁となり、後に彼を大きく成長させるきっかけにもなったのである。

 

 今回取り上げた技や能力は、いずれも“知らなければ絶対に避けられない”、あまりにも理不尽な「初見殺しの技」だった。しかも、これらの能力の犠牲となったのは、名もなきキャラクターではなく、主人公にとってかけがえのない仲間たちであり、我々ファンも一緒に絶望を味わった。

 それでも登場人物たちは、理不尽な力に抗い、再び立ち上がる。その姿にこそ、観る者を突き動かすカタルシスがある。仲間たちの死という大きな代償の上に成り立つ勝利と成長の物語だからこそ、これらの物語は今なお語り継がれ、長く愛され続けているのだろう。

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