
天才物理学者・湯川学を福山雅治さんが演じ話題になったドラマ『ガリレオ』(フジテレビ系)は、放送終了から10年以上経つが、いまだに根強い人気を誇る。
人気の理由の1つは、常識では考えられない犯行のトリックだろう。犯人は計画的で、湯川が科学的に証明しないと完全犯罪になってしまいそうな事件ばかりだ。
犯人役は毎回ゲストとして豪華な俳優が演じ、彼らが湯川と対決する中でさまざまな表情を見せてくれるのも魅力的である。そんな犯人の中には、湯川を苦しめた強敵も存在する。トリックが巧みなのはもちろん、警察が動きを全て見透かされているかのようで、見ていて感心させられてしまう。
※本記事には作品の核心部分の内容を含みます
■完璧で秀逸な計画に基づく毒殺事件
まず紹介したいのが、「聖女の救済(前後編)」で天海祐希さんが演じた真柴綾音だ。殺害されたのは彼女の夫・真柴義之で、死因はヒ素による毒殺である。義之は自宅でコーヒーを入れて飲んだ後に死亡し、真っ先に妻の綾音が疑われた。しかし、彼女はその時北海道へ出かけていた。
そのため、誰が、いつ、どのように毒を入れたのかが謎となる。そこで湯川が捜査に協力し事件解決へと導くが、それはそう簡単なことではなかった。
結論を言えば、綾音は義之の習慣を利用したのである。義之は普段から水道水を飲まず、ミネラルウォーターを愛飲していた。コーヒーを飲む時も同様で、ミネラルウォーターが切れた時だけ浄水器を通した水道水を使うくらいだ。
綾音はそこに目をつけ、浄水器にヒ素を仕込み、ミネラルウォーターの量を調節したうえで北海道へ出かけた。これにより、義之は水道水を使わざるを得なくなり、毒入りコーヒーを飲むことになったのだ。
義之の遺体が発見された後、綾音は水道水を使って花の水やりをし、浄水器に残ったヒ素を完全に洗い流した。そのため、浄水器からはヒ素が検出されなかった。
もし、綾音が出かける前に浄水器に細工をしたとなると痕跡が残るが、彼女は1年も前に仕掛けをしていた。そして、その間水道水が使用されないよう、夫を側でずっと見守り続けていたのである。
プランターの土から検出されたヒ素が決め手となったが、証拠があまりにも少なく、綾音の犯行を立証するのが難しい事件だった。緻密な計画を立てた聡明さ、そしてそれを実行した鋼の意志も含め、恐ろしい犯人だった。
■湯川も認める天才が立てた完璧な計画
劇場版『容疑者Xの献身』に登場した、堤真一さんが演じる石神哲哉もまた、かなりの強敵だった。石神は湯川の大学時代の同級生で、天才数学者である。そのため、彼が立てた計画は論理的で穴がなかった。
ある日、石神の隣人親子が、自分たちに危害を加えてくる元夫を殺害。それに気付いた石神は、親子のため殺人の隠蔽工作を手伝う。彼は無関係の男性を殺害して元夫の死体に見せかけ、犯行時刻にズレを作り出した。すべては隣人親子のために……。
石神のおかげで隣人親子には鉄壁のアリバイが作られ、警察は疑う余地がなくなる。ただ湯川だけが、次第に旧友である石神の犯行を確信していくことになる。
しかし、石神の計画を証明することができないまま終盤を迎え、あろうことか石神は、自分が元夫を殺害したと自首までする。その際、親子が罪悪感を抱かず済むよう、自分がストーカーであるかのように装い、彼女たちに憎まれるように仕向けることもした。
そこまでが石神の計画だった。そのままいけば親子は罪に問われることもないはずだった……。が、罪の意識に押しつぶされた母親がついに自白してしまう。これによって石神の計画は崩れ去った。
もし母親が自白しなかったら、きっと石神だけが殺人犯として裁かれていた。湯川は真相にたどり着いていたが、彼の“献身”を止める術はなかったはずだ。石神の唯一のミスは、人の心を読み切れなかったことだけだろう。