霧の都に冥王星もワケアリすぎ? 『銀河鉄道999』メーテルが明言した「宇宙一を冠する星」の真実の画像
Blu-ray『銀河鉄道999』(東映ビデオ) (C)松本零士/零時社・東映アニメーション

 松本零士さんの名作『銀河鉄道999』は、主人公である少年・星野鉄郎が、謎の美女・メーテルと共に999号で巡る宇宙の旅を描いた物語である。その冒険は、まさに“非日常”の連続であった。

 旅の途中で立ち寄る星々は、決して安全で快適な場所だけではない。なかには、人間離れした能力を持つ人々や、過酷な運命を背負った人々が暮らしているケースもある。そのような星に到着するたびにメーテルは、「この星は宇宙で一番……な星よ」と、その星が持つ“宇宙一の特性”を解説してくれるのだ。

 そこで今回はメーテルが鉄郎に伝えた「宇宙一」を冠する星々が、どのようなものだったのかを振り返ってみたい。

 

※本記事には各作品の内容を含みます

 

■宇宙で一番美しい人がいる星「霧の都のカスミ」

 「霧の都のカスミ」のエピソードに登場する星は、「宇宙で一番美しい人々が住む星」である。

 ここは2つの惑星がくっついた、いびつな形状をしている。その駅である「霧の都」に降り立った鉄郎は、行き交う人々を眺め「はーーなんてきれいな人たちなんだろう」と感嘆の声をあげていた。するとメーテルは「ここの人たちは宇宙で一番美しい人たちだといわれているわ」「かげろうのようにエレガントで品があって…」と、説明するのだ。

 確かに登場する女性はみなメーテルのような美貌の持ち主で、このエピソードで鉄郎たちのパスを盗んだ影郎とカスミというカップルも美男美女であった。

 しかしかげろうのような美しさを持つ彼らは、太陽の光が届かない過酷な環境下で生活してきたこともあり、地球人と比べると体力は100分の1しかない。パスを盗んだ2人は鉄郎やメーテルになりすまして999号に乗るものの、列車発車の際のショックに耐えきれず、心臓麻痺を起こして共に命を落としてしまう。

 「美人薄命」という言葉を体現するかのように、この星に住む人々は誰もが美しいものの、その命はきわめて儚く短い運命にあった。

■宇宙で一番悲しい所「迷いの星の影(冥王星)」

 「迷いの星の影」のエピソードに登場する星を、メーテルは「宇宙で一番悲しい所」と表現している。

 凍てつく氷の駅「冥王星」で下車した鉄郎とメーテル。そこは機械の体を手に入れた人間たちの、かつての生身の姿を保存しておくための、いわば氷の墓地であった。

 メーテルもまた、氷の下に眠る生前の我が身を見たのだろう。ひざまづき、涙を流していた。そんな彼女に「なにを見てるんだい?」と聞く鉄郎に対し、「なんでもない」とごまかしている。この様子だけでも、冥王星は悲しみが詰まった場所であることが分かる。

 その後鉄郎は、墓地の管理人・シャドウという女性に出会う。彼女も生前の美しい自分を氷に閉じ込めており、鉄郎もその美しさに驚く。しかし、機械化された現在のシャドウは昔のような顔を再現できず、今は顔のないのっぺらぼうなのだ。

 さまざまな事情で体を機械化し、生前の姿を氷の下に残しておく人々。その結果、生身の人間の頃が良かったと後悔し、この星を訪れては涙する。

 悲しみが集う冥王星は永遠の命と引き換えに失った、人間らしさを嘆く場所でもあるのだろう。

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