■メリオダスも実力を認める『七つの大罪』エスカノール
鈴木央氏による『七つの大罪』(講談社)のエスカノールもかなりのビッグマウスだ。エスカノールの夜の姿は気弱で、体つきも小さくて細い。一見、七つの大罪のメンバーだとは信じられないほどである。
しかし、太陽が登るにつれて彼の体つきは変化する。筋肉が盛り上がり、背丈も大きくなり、いかにも強そうな巨漢になるのだ。気弱な性格も傲慢に変わり、口調も尊大になって、一人称は「僕」から「私」を経て「我」になる。
魔神王直属の精鋭部隊・十戒のひとりであるガランとの戦いでは、「人間ではないな?」という問いに対し「人間です ただし すべての種族の頂点に立つものでもある」「〈七つの大罪〉〈傲慢の罪(ライオン・シン)〉エスカノール様だ」と答えている。ガランも呆れるほどの傲慢さだが、どこか噛ませ犬のようにも見えてしまう。
しかしいざ戦いが始まると、エスカノールは最初に対峙したガランだけでなく、エスタロッサにも勝ってしまった。しかもまだその時点で本気になっていない……。
エスカノールの本気が見られたのは、魔神化してしまったメリオダスやゼルドリスとの戦いでのことだ。彼は正午ちょうどになると力が頂点に達し、「天上天下唯我独尊」状態になって無双できる。実際、この2人との戦いでも勝利をおさめている。その時に使用する「聖剣エスカノール」という手刀の技名などは、自分の攻撃は何でも必殺技になると言っているようなものだ。
メリオダスはエスカノールについて「オレよか強えぞ?」と話していたが、それがまさか本当だったとは……。
今回紹介してきたように、ビッグマウスキャラの中には、その言葉を現実にするだけの力を持った本物の強者が存在する。有言実行を貫くことで、彼らは読者に驚きや感動を与えるのだ。
口先だけの弱者か、言葉すら超える強者か。その両極端に振り切れるからこそ、ビッグマウスキャラは読者を惹きつけてやまないのである。


