■「仲間との関係性」チームを引き上げる真の存在感
エースの評価は、個人の得点力だけで決まるものではない。チーム全体をどう引き上げるか、いかに勝利へと導くか。その影響力こそ、真のエースを語るうえで欠かせない要素だ。
沢北は、全国随一のスコアラーであることに疑いはない。しかし彼のプレイは常に「自分で決める」ことに軸足を置いている。
その背景には、深津や河田雅史といった精鋭が控えているからこそ、沢北は思うままに暴れられる。裏を返せば、仲間を活かしたり、責任を背負い込んだりする姿勢は希薄であり、あくまで自身のプレイ内で完結する“個の怪物”としての側面が強い。
流川もまた、登場当初から典型的な自己中心型スコアラーであり、さらに1年生ゆえ、チームからの信頼不足も否めなかった。
しかし山王戦で沢北に挑む中、「パス」という新たな武器を手にする。連携を交えた攻めによって自らの脅威を高めただけでなく、湘北の総合力をも引き上げた。その進化の過程こそが、伸びしろ込みで評価されるべきエース像だろう。
仙道は、三者の中でもっとも完成された「チームと共に戦うエース」といえる。
海南戦ではポイントガードとして試合を操り、魚住がファウルトラブルで退いた場面でも「仙道ならきっと何とかしてくれる…!!」という安心感がベンチを含め、チーム全体を包んだ。
柔軟なゲームメイクに加え、圧倒的なカリスマ性。仲間に絶対的な信頼を寄せられ、仲間をも引き上げるその姿は、理想のエース像を体現しているだろう。
こうして比較すると、3人の“最強エース像”はそれぞれ異なることがわかる。個人技の完成度では沢北が突出しており、チームを使う総合力では仙道が際立つ。そして将来性を含めれば、流川が最強候補として浮上する。それぞれが異なる形で、“エースの条件”を満たしているのだ。
今回は3人を中心に考察したが、本作には他にも海南の牧紳一、翔陽の藤真健司、さらには愛和学院の通称「愛知の星」諸星大など、多彩な実力者が存在する。
あなたが考える最強エースは、果たして誰だろうか。


